おっぱいは大切な“センサー”

昔は母乳より粉ミルクの方が優れているという時代もありましたが、今では混合を含めた母乳育児の割合は95%近くになるのだとか。

「ほ乳類の発明のひとつが母乳です。」と中尾先生。
「母乳には、栄養的な役割はもちろん、免疫成分があります。そして、授乳中に出るオキシトシンという成分はお母さんを穏やかにします。お母さんが受けている精神的なストレス、周囲の環境の状況、さまざま情報が、母乳を通じて赤ちゃんに伝わります。おっぱいは赤ちゃんにとって、大切なセンサーのような役割なのです。」

日本人の母乳と、乳発展途上国で豊かな自然の中暮らしている人の母乳を比べると、その成分には大きな違いがあるそう。
日本人の母乳には、化学物質に反応して増えるというアレルギー因子が高い数値で含まれていたのだとか…

大気汚染や添加物、目に見えない様々なものが、日本人の母乳成分を、アレルギーを誘発するようなものに変えてしまっているのではないかと言われています。

ここまでの話を聞くと、子どもがアレルギーになるのは、親の不摂生のせいではないか、と申し訳ない気持ちになりますよね。

実際私自身も子どもが生後3ヶ月でアレルギーを発症。突然全身に真っ赤なじんましんが出てしばらくは原因が分からず、涙を流したこともありました。

しかし、「あまり神経質になりすぎないように」と中尾教授は言います。

「今はアレルギーになる子がほとんどになってきました。その大きな原因は、お母さんがファストフードばかり食べていた事や、オーガニックではない化粧品を使っていたことではありません。遺伝の可能性もほとんど無いと言われています。
一番は環境の問題。個人レベルで解決できる問題ではなくなってきています。

WHO(世界保健機関)でもアレルギーに対して勧告が出され、もはや世界的な傾向としてアレルギー増加が危険視されています。私たちは地球規模のレベルで予防策を講じていかなければなりません。
そのため現在も、アレルギーになった人への対処療法を含めた、様々な研究がなされています。

家族でアレルギー対策として乳酸菌を摂取したり、添加物を避けたり、予防を考えるのはとても良い事ですが、子どものアレルギーは、半分ほどの割合で大人になると治ります。
あまり神経質になりすぎるとそれも身体には良くありません。様々な雑菌にもふれながら身体を強くし、免疫を鍛えていってはいかがでしょうか。」

赤ちゃんを母乳で育てたくても、どうしても母乳が出なかったり、様々な都合で母乳育児ができない人もいます。確かに母乳が赤ちゃんに与える成分も大切ですが、粉ミルクもなるべく母乳に近い成分へと日々進化しています。

赤ちゃん、子どもにとっても一番の栄養はお母さんの笑顔。出来る事から、無理の無い範囲で対策をしつつ、環境問題についても目を向けていきたいですね。