カナダ、マギル大学のフランク・J・エルガー博士らの研究グループが9月に発表した論文によると、青少年が家族と夕食を一緒に過ごす習慣の有無と「ネットいじめ」には、強い関連性があるそうです。

エルガー博士らは、アメリカ中西部の49校、12歳から18歳までの合計1万8834人の生徒を対象にした調査データを用いて、「ネットいじめ」による被害と生徒のメンタルヘルスや飲酒・薬物使用などの問題との関連性について、統計学的な解析を行いました。

その結果、全体の18.6%にあたる生徒が過去1年間に何らかの「ネットいじめ」を受けており、自身にメンタルヘルスや飲酒・薬物使用などの問題をかかえている生徒ほど「ネットいじめ」の被害にあっているという関連性がみられました。

しかしそれ以上に、家族と夕食をとる機会が少ない生徒ほど「ネットいじめ」の被害にあう傾向があり、メンタルヘルスや飲酒・薬物使用などの問題よりも関連性が高いことが分かったそうです。

エルガー博士らは論文で、「家族で夕食をとる習慣(家族同士のコミュニケーション)は青少年のメンタルヘルスにとって有益であり、ネットいじめによる被害の予防にもなり得る」と指摘しています。

SNSによるトラブルなど、目に見えないところで進行するだけに恐ろしい「ネットいじめ」ですが、スマホやパソコンの使用時間を制限するといった場当たり的な対策よりも、家庭の夕食やだんらんの時間など、昔ながらのコミュニケーションを大切にすることこそが最も有効な対処方法といえるのかもしれません。

<参考サイト>
Family Dinners Good for Teens’ Mental Health, Could Protect From Cyberbullying[JAMA Network]
Cyberbullying Victimization and Mental Health in Adolescents and the Moderating Role of Family Dinners[JAMA Network]
「ネット上のいじめ」から子どもを守るために[文部科学省]

科学論文を読み漁るのが趣味のフリーライター。最新の知見に触れることが好きで、科学や健康、SF、音楽、映画、アニメ、ゲーム、アプリなどを執筆分野に活動中。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業、東京大学大学院修了。専攻は生命科学。