ニオイを抑える構造はいったい!?

確かに公衆トイレは臭いというイメージがある。しかし、横浜市の当時の担当者も納得して導入に踏み切ったその無水トイレの臭気を抑える構造はどうなっているのだろう?? 小山田さんは、説明用の模型も用意してくださり、その構造について解説してくれた。

「まず無水トイレを導入するには専用の便器に変えていただかないといけません。そして底の部分に装着するカートリッジが臭いを抑える秘密なんです」

カートリッジの実物。プラスチックでできている
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こちらがカートリッジの断面
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そして小山田さんが見せてくれたカートリッジ。一体どんな仕組みがあるのか? このままでは中身が分からない・・・が、ちゃんと用意されていた、カートリッジ内の構造が確認できるよう切断された模型が。

「洗面所などの下についているトラップという曲がった水道管をイメージしてもらえば分かりやすいですね。ネズミや虫が水道管から上がって来ないような仕組みになっているものです。水洗トイレもトラップの構造になっているのですが、このカートリッジ内が独自のトラップ設計になっていて、排水管からの臭いを防いでいるのです」と小山田さん。

「模型内の黄色の部分は尿で、その上層部に青い液体が浮いています。この液体は密閉液と言い、これがフタの役割をすることで、臭いの漏れを防いでいるのです。密閉液は油と水の関係のように水より比重が軽いので上に浮き、常にフタをした状態となるのです」

カートリッジ内がトラップ構造になっており、密閉液がフタの役割をしている
こちらが密閉液(青の液体)の模型。振ってもすぐに浮く
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なるほど、こういう構造になっていたとは、目から鱗。トラップ構造で配管からの臭いを抑え、さらに尿の臭いは、密閉液で抑えている。本当に水を一滴も使っていない。シンプルな構造ながらとても合理的と言える。

このカートリッジの寿命は使用回数にもよるが、約2ヶ月程度で交換すれば良いそうだ。しかし、まだ残る疑問がある。便器にかかった尿が臭いを発することはないのか? ということだ。小山田さんがこう答える。

 
便器の模型。Falcon社は長期にわたり使用できる陶器を採用している
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「私はこれまで何百人、何千人の方にご説明してきましたけれど、皆さん同じ疑問をもたれるんですね。私もいろんな便器を見てきましたし、研究もしてきたんですけど、便器の汚れとは? 皆さん、尿だと思っているのですが、実際は水なんです。

そう、水垢。便器に付いた黒い線を見たことがありませんか? あれが水垢です。水の中に含まれるカルシウム、鉄分などが付着して汚していくんですね。水垢は掃除してもなかなか取りにくいので、研磨剤の入った洗剤を使って磨き上げます」

「そうすると、細かい傷が便器につき、そこにさらに汚れが付着する。そういった形でどんどん汚れていくのですね。無水トイレは水洗のように毎回水を流すことはないですし、便器に尿が流れ残っても、乾くとパウダー状になるので、それを毎日清掃のスタッフが専用のクリーナーを使って拭き取るだけで、いつでも清潔な状態を保てるのです。清掃の際にも便器に水をかけることはないです。しかもFalcon社の便器は陶器なので、プラスチック製と違い耐久性にも優れているのです」

省電舎に設置された無水トイレ
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実際に清掃しながら説明していただいた
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小山田さんいわく、「水を流さない方が汚いというのは間違いで、逆に水を使う方がバクテリアなども発生し、衛生面でも良くない」とのこと。バクテリアが発生しないということは、悪臭も発生しないということだ。そして、実際にトイレの悪臭の発生源の多くは、便器からではなく、床を含めた便器周辺のほか、トイレ内の湿度の高さも要因だという。

無水トイレは、トイレ内の湿度を下げ、悪臭の発生源を抑えられることができる。なのに、同じように悪臭がした場合、先入観から、「水を流さない」が理由だと思われてしまうそうだ。つまり、無水トイレは節水という環境面だけでなく、悪臭を防ぐという衛生面でもメリットがあると言える。