趣味との関わり方も自分で決めていい。それがどんどん変わっていってもいい

©鶴谷香央理/KADOKAWA

『メタモルフォーゼの縁側』印象的なタイトルは、シンガーソングライター・青羊(あめ)さんのソロプロジェクト “けもの”の楽曲『めたもるセブン』からヒントを得てつけられたもの。
 

「けものでサポートメンバーをしているトオイダイスケさんと私が、もともと俳句仲間で。それをきっかけにけものを聴いて、これはカッコいい!と。ライブにも行くようになりました。

一方その頃、作品のタイトルがずっと決まらなかったんです。それまで考えていたタイトルはいまとは全然違うもので、いま考えると絶対ナシなタイトルばかり浮かんできて……(苦笑)。そんなときに『めたもるセブン』という曲のことを思い出したんです。作品を作っているときの気分にピッタリの曲でした。

当時『めたもるセブン』を聴いて、“自分の好きなようにしていいんだな”と、すごく思いました。けものの曲はわりとどれもそうなのですが、自分にすごく正直というか、“いまはこの気分なんです”という、常に変化している感じがあって。

変わることを恐れずに、“いま、変わろう”と自分で決めている感じが、カッコいいなと。

“自分はこういう人なんだ”って、別に決めなくてもいい。自由に好きなものを楽しんでいいし、趣味との関わり方も自分で決めていい。で、それがどんどん変わっていってもいい。作品を描き始めるとき、そういうことはすごく思いました」

<時がわたしを選んだようです/やって駄目なら また試せばいい/2017年のメタモルフォーゼ/そろそろ自分のこと、愛してみませんか?>

けものが歌う風通しのよいフィーリングは、本作にも通じるものだ。うららも雪も、それぞれの人生を背負いながら、自分らしく生きるということに実直に向き合っている。“自分を生きること”に、年齢は関係ない。

誰もが思わず自分の人生を重ねてしまう普遍的なテーマが根底に流れているからこそ、本作は幅広い読者の心をつかむのだろう。
 

「でも実際は難しいですけどね、ほんとうに何もかもから自由になるって。

例えば、自分にとって自然な状態ってなんなのか、と考えると、もっと不自然なことになってしまったり。気を使わなきゃと思っても、じゃあどうすれば気を使ったことになるのかな、とか。それは漫画を描いていてもけっこう難しいですね。自分のスタンスをどう持つのか、というか。

多分思ったことを全部ずらずら描いてしまったら、必ず傷つく人もいると思うんです。でも傷つけないように描くのは絶対無理だし。そういうことは考えますね。考えますけど……答えは出ないじゃないですか。大勢の人がどう感じるかなんて、わからないし。

すごく単純に、“誰かが好きと言っているものや人のことをバカにしたりしない”とか、めちゃくちゃ当たり前のことを考えているくらいです(笑)」