■好きなものを好きだという素直な気持ち
いまのところ一番好きな話が、第7話「炎陣武走ボルカノアタック!!」です。
仲村さんがハンバーガー屋でおもちゃ付の「ラッキーセット」を買い、シシレオー&ライドライオー(バイク)の走るフィギュアを貰ってニヤニヤしてると、そこに親子連れがやってきます。
女の子も「ラッキーセット」を注文するんですが、店員に「おもちゃを選んでください」って言われて、ママが『ラブキュートMAX!』(架空の女児向けアニメ)のラブキュートのチャームをもらうんですね。
でも女の子が変わった子で、「マナが欲しいのはこっちなの!」ってシシレオーを欲しがる。そんなの、仲村さんは当然自分を重ねて見るわけですよ。でもマナちゃんはママに「お友達はみんなラブキュート持ってるよ」「一人だけ違うとヘンだよ?」というお決まりのセリフで攻められ、黙ってチャームを受け取ってしまう。見ていてツラい!
自分がかつて、黒いランドセルが欲しかったのに「女の子がそれだとヘンだから」という理由で赤を買い与えられ、「子供は語彙も少ないし、賢い大人を負かすなんて無理だ」と悟ったときの絶望を思い出した仲村さんは、「シシレオー&ライドライオー、君たちはあの幼女さんのところへ行ってあげてくれ」と決意。その親子がちょうどカウンター席の一直線上に座ってることを利用し、おもちゃを子供のもとにおもちゃをプルバックで走らせるわけですが、
「炎陣武走ボルカノアタック!!」
という文字とともにおもちゃのバイクが炎をまとって走る姿が無駄にデカいコマでカッコよく描かれるんです。「炎陣武走(えんじんぶそう)」っていういかにもニチアサに出てきそうな当て字とか、コマの隅っこにある「※演出です。実際のおもちゃから炎は出ません」っていう文字とか、そもそも「ラッキーセット」って! という部分で特オタとしてはニヤニヤしつつ、このおもちゃには仲村さんの想いが乗ってることを考えると泣けるし、よくわからない感情になります。
そして仲村さんは、子どもを守って闘うシシレオーの姿を思い浮かべ、「子供の味方をしてあげるのがヒーローだ。あの時私が欲しかった『味方』に、私がなるよ幼女さん--」というモノローグのあと、こう言います。
「ヘンじゃないよ。欲しいって思ったもの、選んでいいんだよ」
この『トクサツガガガ』は、
●特撮を見るとシンプルで大事なことが学べる
●好きなものを素直に好きって思う気持ちは大事
という要素が繰り返し出てくるんですが、この7話はその2つと「特撮あるある」が絶妙に混ざった、最高によくできた話だと思います。
さらに、この回の次のエピソードでは、この幼女きっかけで「女児向けアニメを好む成人男性(つまり、男児向け特撮を好む成人女性と対極の存在!)」と知り合いになり、どんどん話が広がります。
そのあたりは、11月28日発売の1巻を読むのがいいのではないかと思います。
『トクサツガガガ』、特撮を好きな人にも、そうでない人にも、おすすめです。