オープンキッチンのレストランが好きだ。シェフが目の前で作っている料理が自分のものだと思うと、嬉しくなってくる。
この5月、代々木公園駅近くに開業した、モンブラン専門店「モンブランスタイル」も、オープンキッチンの店だった。
〈モンブラン専門のケーキ屋だ〉と思い込み、地図アプリを頼りに店を探した。ところが、その住所には、ケーキ屋らしい店は見当たらなかった。
暖簾がかかった、寿司屋風の小体な店が、目指す店だった。〈ほんとにここなのか〉と恐る恐る入った店内も、白木のカウンターの、寿司屋風だった。
料理は「モンブランデセル」と「モンブランパフェ」の2種類。せっかくなので両方頼むことにする。
ご主人は、カウンター向こうの、オープンキッチンでモンブランデセルを作りはじめた。
円を描くように黄色いクリームを絞ると、円の中心に、茶色いクリームを載せた。その上に白いクリームと、小さく切ったメレンゲをあしらう。最後にもう一度、黄色いクリームをうず高く盛り上げ、粉砂糖をかけ、モンブランデセルを完成させた。
パティシエというよりも、寿司職人が寿司を作っているような仕事ぶりだった。
自分が食べてきたモンブランは、煮栗の下に、マロンクリームと生クリームが盛られたものが多かった。ところが、この店のモンブランデセルは、複数のクリームを使い分けているようだった。
どんなクリームを使っているのか、ご主人に訊ねた。
なぜテイクアウトなし? 独自のこだわり
「2種類のモンブラン・クリームを使っています。渋皮をむいた栗で作ったものと、渋皮ごと加工したモンブラン・クリームです。最初と最後に絞ったのが、渋皮なしのモンブラン・クリーム。二番目の茶色のクリームが、渋皮が入ったモンブラン・クリームです」
渋皮が入ったモンブラン・クリームの上に載せたのは生クリームか。
「そうです。低温殺菌の無糖生クリームを載せ、その上に、ヘラで切ったメレンゲを置きました」
なぜスポンジケーキを使わないのか。
「最近のモンブランは、土台にメレンゲを使ったものが主流です。うちもメレンゲを用いますが、ごく小さなメレンゲを添えるようにしています」
土台ではなく、なぜメレンゲを、添えるように使うのか。
「卵白と砂糖で作るメレンゲは、とても甘いのです。食感を愉しむ程度に使わないと、とても甘いモンブランになってしまいます。そのため添える程度にしました」
モンブランというと、出来合いをサービスする店が一般的だと思うが。
「注文毎に私がひとつひとつ作り、店内で召し上がっていただきます」
テイクアウトはできないのか。
「握りたての寿司同様、モンブランも盛りつけたら、すぐに劣化が始まります。しかも栗は、香りや風味が飛びやすい特性があります。そのため香料や洋酒で香りを補ったモンブランを出す店が一般的です。
でも、うちでは過度の加糖や香りづけに頼らない、栗本来の香り、風味を愉しめるモンブランを提供したいと思い、作りたてを味わっていただける、このスタイルにしました」
……そんな思いもあり、寿司屋風の店舗とサービスを選んだ、というのだ。