こちらも作りたて!絶品の栗パフェ

内観

ご主人は、栗好きの間ではとても有名な「和栗や」という店(台東区谷中)に構える、和栗専門店の社長、竿代(さおしろ)信也さん。

栽培面積日本一を誇る栗の産地、茨城県笠間市にある自社農園と契約農家の畑で採れた栗を、モンブラン・クリームに加工している。

竿代さんによれば、世界には大きくわけて4つの栗があるという。ヨーロッパ栗、アメリカ栗、中国栗、和栗だ。

和栗は大粒で渋皮がむきにくいものの、味が繊細で、豊かな風味が魅力だそうだ。

「和栗の風味を味わってほしいのですが、それを活かそうと思うと作るのがとても難しい」

と竿代さんは告白する。そのせいもあり、香料や洋酒で香りを補うモンブランが多いのだそうだ。

これまで食べてきたモンブランは、もっと甘ったるかった。過度の加糖を施したモンブランを食べ慣れた人には、この店のモンブランデセルはもの足りないと感じるかもしれない。

けれど、栗の味をできる限り活かした、茹でたての栗をそのまま食べる感覚に近い、自然な風味のモンブランを食べさせてくれる。

モンブランデセルに続き、作りたてのモンブランパフェが登場した。

モンブランパフェには、バージョンが2種類ある。通年提供する小豆を使うタイプと、季節限定の桃のシャーベットが入ったタイプだ。この日は桃のシャーベットを選んだ。

モンブランパフェ

桃をゼリー状に加工したシャーベットを、器の下段に入れる。その上に栗のペーストで作ったアイス、渋皮ごと加工したモンブラン・クリームを載せ、生クリームを盛る。渋皮をむいた栗で作ったモンブラン・クリームを絞った上に、大粒の渋皮煮を添えればできあがり。

モンブランデセル同様、渋皮煮以外は、不自然な過度の甘さはまったくない。自然な風味と、茹でたての栗を食べているような感覚だった。

「モンブランパフェは、味の変化を愉しんでいただけると思います。一方、単調な味わいかもしれませんが、栗好きの方はモンブランデセルを召し上がってください。モンブランデセルには、茎ほうじ茶が合うと思います」

隣に座った女性は、モンブランデセルを食べ終えた後、モンブランパフェを完食した。

池波正太郎がこんなことを書いている。

〈てんぷら屋に行くときは腹をすかして行って、親の敵にでも会ったように揚げるそばからかぶりつくようにして食べなきゃ〉(『男の作法』)

この店のモンブランも同じだ。栗の香りが消えないうちに、すぐに食べる。そもそも食べごろをすぎた料理は、モンブランも天ぷらも寿司もうまくない。

ひとつだけ竿代さんに訊き忘れたことがある。竿代さんは「パティシエ」と呼ぶべきなのか、あるいは「栗職人」なのか。次回訊いてみようと思う。

「モンブランスタイル」
住所/東京都渋谷区富ヶ谷1-3-3
電話/070-4343-1568(電話対応は19時以降)
営業/12:00~19:00(売り切れ次第終了)
定休日/水曜 ※臨時休業7月23日、8月4日、5日。なお9月初旬頃、栗収穫のため、2週間程度休み。

モンブランデゼルはレギュラー1200円、ラージ1500円(動画と画像はラージ)。
モンブランパフェは1500円。
厳選茎ほうじ茶は400円。※すべて税込み。

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。