「最近、なんだか疲れやすくて、からだの抵抗力が落ちている気がする。もしかして、あのピリピリとした痛みがまた来るのでは?」

「若い頃に帯状疱疹にかかって、本当につらかった。夏になると、なぜか体調を崩しやすくて、またならないか心配」など、帯状疱疹のつらい経験がある方や、周りでかかった人の話を聞いて不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

とくに、体力が消耗しやすく、免疫力が低下しがちな夏は、帯状疱疹への注意が必要な季節です。

この記事では、なぜ帯状疱疹が発症するのか、そのメカニズムを詳しく解説するとともに、とくに夏場に気をつけたい理由、そして最も重要な「繰り返さないための予防策」と「万が一発症してしまったときの適切な対応」について、具体的にお伝えします。

帯状疱疹とは?なぜ夏に注意が必要なの?

帯状疱疹は、多くの人が子供の頃にかかる「水ぼうそう(水痘)」と同じウイルス「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって引き起こされる皮膚の病気です。

1.発症のメカニズム:潜んでいたウイルスによるもの

一度水ぼうそうにかかると、治った後も水痘・帯状疱疹ウイルスは完全にからだから消えるわけではありません。実は、背骨の近くにある神経節と呼ばれる神経細胞が集まった部分に、ひっそりと潜伏し続けるのです。

健康で免疫力が正常に働いている間は、このウイルスはおとなしくしていますが、以下のような要因で免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活性化し始めます。

・加齢
・過労や睡眠不足
・精神的なストレス
・大きな病気や手術
・免疫抑制剤の使用 など

再活性化したウイルスは、神経節から神経を伝って皮膚へと移動し、そこで炎症や水ぶくれを引き起こします。これが帯状疱疹です。

2.帯状疱疹の主な症状:痛みと発疹の二段階

帯状疱疹の症状は、大きく分けて初期症状としての「痛み」と、その後にあらわれる「皮膚症状」があります。

初期症状(痛み)
多くの場合、まずピリピリ、チクチク、ズキズキとした神経痛のような痛みがあらわれます。この段階では、まだ皮膚に変化は見られないため、原因不明の痛みとして筋肉痛や内臓の病気などと間違われることもあります。

皮膚症状(発疹・水ぶくれ)
痛みが始まってから数日~1週間ほど経つと、痛みを感じていた場所に赤いブツブツが出現します。これらのブツブツは小さな水ぶくれに変化し、やがて膿を持つようになります。これらの水ぶくれは「帯状疱疹」という名前の由来にもなっており、神経の走行に沿って帯状に広がるのが大きな特徴です。最終的に、水ぶくれは破れてただれたり、かさぶたになったりして、2~4週間ほどで治癒に向かいます。

3.なぜ夏場に帯状疱疹が発症・悪化しやすいのか?

帯状疱疹は年間を通して発症しますが、とくに夏場に注意が必要とされるのには、いくつかの理由があります。

暑さによる体力消耗・免疫力低下
日本の夏は高温多湿で、体力を消耗しやすい環境です。暑さで寝苦しく睡眠の質が低下したり、食欲不振に陥って栄養バランスが偏ったりすることも、総合的に免疫力を低下させる大きな要因となります。免疫力が低下すると、潜伏していたウイルスの再活性化を抑えきれなくなるのです。

紫外線による免疫抑制
夏の強い紫外線は、日焼けやシミの原因となるだけでなく、皮膚の免疫機能を低下させる作用があることが知られています。皮膚の免疫力が低下すると、ウイルスが再活性化しやすくなったり、皮膚症状が悪化しやすくなったりする可能性があります。

生活習慣の乱れによる免疫力低下
夏休みやレジャー、イベントなどで生活リズムが不規則になったり、夜更かしが増えたりすることもあるでしょう。また、暑さから冷たい飲み物や食べ物を摂りすぎることで胃腸が弱り、栄養の吸収が悪くなることも、免疫力低下につながります。

これらの要因が複合的に絡み合い、夏は帯状疱疹が発症しやすく、また症状が悪化しやすい時期といえるのです。