弁護士・理崎智英さんが、離婚にまつわるさまざまなお悩みにお答えします。

今回のご相談者は、妻が勝手に離婚届を提出しようとするため悩んでいます。

<相談内容>
喧嘩をするたびに、妻が勝手に離婚届を提出しようとします。私は離婚するつもりがありません。防ぐ方法はあるのでしょうか。もしも、妻が一人で離婚届を記入し、提出したらどうなるのでしょうか。(北海道在住・35歳男性)

離婚届には夫婦の署名が必要です。協議離婚(話し合いによる離婚)が成立するためには、法律上、夫婦双方に離婚する意思があり、かつその意思が離婚届を提出する時点で存在していることが求められます。

そのため、夫婦のどちらか一方の署名が欠けている離婚届は無効であり、そのような離婚届を提出しても、役所には受理してもらえません。

1. 役所は本人の署名か判断できない

離婚届に署名した時点では離婚する意思があったとしても、実際に提出する時点でその意思がなくなっていれば(署名後に気が変わった場合など)、双方の署名がそろっていたとしても、その離婚届は無効になります。

よって、ご相談者が妻と離婚する意思がない限り、離婚届に署名をしなければ、基本的には協議離婚は成立しません。

ただし、妻が夫の署名を勝手に書いて離婚届を提出した場合、役所はその署名が、本当に夫本人のものかを判断できません(役所は筆跡調査を行わないためです)。

そのため、形式的に夫婦双方の署名がそろっていれば、離婚届はそのまま受理され、戸籍上は離婚が成立してしまいます。

このような離婚は法律上無効ですが、無効であることを確定させるためには、まず調停を申し立て、最終的には「協議離婚無効」の裁判を起こして判決をもらう必要があります。そのため、かなりの手間と時間がかかります。