――で、「大槻さんのココが好き」「ココに影響を受けた」という話を伺いたいのですが。

団長:俺は「バンドのフロントマンは文化人でなければならない」という概念を教えてもらった気がします。

大槻:それは大きな誤解だよ! 俺、ちっとも文化人なんかじゃないもん!

団長:いろんなテレビ番組で見ることが多かったじゃないですか。他のアーティストの方は音楽番組に出てるイメージなんですけど、大槻さんはバラエティ番組でコメンテーターもやっていたじゃないですか。俺の世代だと「ここがヘンだよ日本人(TBS系列で98年から02年まで放送されていたバラエティ番組)」ですね。この国で一番変な日本人が出てると思ってました。デーモン小暮閣下もそうなんですが、フロントマンというのは文化的で、スポークスマンとして物事を発信できないといけないなというスタイルを教わった気がします。

大槻:「ココヘン」もカットされた部分もすごかったんだよ。いつだったか不良を何十人も呼ぶ企画があってさ、それで「オマエナンダヨ!」と外国人と不良のケンカになっちゃって。テリーさんなんかが「やめろ!」と仲裁に入ったりして。その後に不良がスタジオの前で外国人出演者たちを待ち伏せしていて、第二戦を始めてしまったとか。すごい出待ちだよ。

団長:すげえ時代だ…。

大槻:ごめんごめん、つい話がそれた。次行こうか。seekくんは僕のベースの演奏テクニックに影響を受けたんだよねえ?

団長:もともとベーシストですからね(笑)。

大槻:僕からスラップを学んだとか(笑)。これ知らない人信じちゃうよ、もちろん冗談です。

 

撮影:小林裕和

seek:(笑)。文章を書くようになったのは大槻さんの小説やエッセイの影響が大きいと思います。今でこそバンドマンの日常はブログやTwitterで発信する機会がありますけど、あの頃、本という形でバンドマンの生き方を読めたのはすごく大きかったと思います。

大槻:あの時代は出版社もバブルで、ミュージシャンに物を書かせようブームというものがあったんですよ。「月刊カドカワ」という雑誌がそれをガンガンやっていて、そこに僕もひっかかったというのがきっかけというか。

seek:それは歌詞の世界観が編集者の目に止まって…みたいなきっかけだったりするんですか?

大槻:というか、僕は元々音楽を志してこうなったわけじゃないので、武道館のステージに立った時ですら「俺はこの仕事でいいのかなあ? 他に向いてることあるんじゃないかなあ」って思ってたから。だから言ったら自分探しでテレビに出たり本を書いたりしたわけで。…実は今でも探してるんだけどね(笑)。

seek・Hitomi・団長・ぶう:いやいやいや!

 

撮影:小林裕和

大槻:人間50歳からだし、野菜ソムリエとか気功の達人とかになれないかな~。

ぶう:野菜ソムリエってちょっとインチキくさそうでいいですね。

大槻:じゃあ一緒になろうか?

団長:そういえば「オイスターマイスター」っていう資格があるらしくて…。

大槻:オイスターマイスター!? いいね、メタルっぽい。それになるよ。

――…話が逸れそうなんで、Hitomiさんお願いします。

Hitomi:俺は歌詞の影響が一番大きいですね。『月光蟲』『断罪!断罪!また断罪!!』を聴いていた時から、歌詞がすごく好きです。あの時期の不気味な感じ、江戸川乱歩チックな怖い世界観が大好きで、今自分が歌詞を書くときも非現実的な設定を作りたいと思うことが多くて、それは大槻さんの影響かなと思います。

大槻:あの頃はまだ歌詞の規制が今よりは緩かったからねえ。『風車男ルリヲ』とか今は無理かもしれない。当時にしてもよく通ったと思うよ。

Hitomi:そういうのがカッコイイなあって。それで、やっぱりseekと一緒で、俺も雑誌(SHOXX)でコラムを書いていたり、詩集を作ってみたりしたのですが、大槻さんの本の影響があります。

 

撮影:小林裕和

大槻:ありがとうございます。

団長:seekさんもHitomiさんも「SHOXX」でコラムを連載されてますけど、やっぱり大槻さんの影響は見えますよ。物の書き方が綺麗というか。

seek:そう考えると、大槻さんのエッセイに出てきた物に影響を受けたことは多いですね。町田康さんとか。

団長:ちょっと前にプログレにハマってるって書いていたエッセイを読んで、俺もプログレを聴き返したり。

Hitomi:俺は大槻さんがきっかけで井上陽水の『氷の世界』を聴いたりしましたね。

大槻:各年代にそういうサブカルチャーのガイド役みたいな人がいて、僕の時代にもいろんな人がいたんだけれども、僕もちょっとはその役目を担っていたのかなぁ。そうやってすすめたものが人に合うかどうかはわからないですけど。でも僕も未だにいろんな人に影響されるよ。たまに若い人の表現で「コレは凄い!」って思うことがあって、逆に参考になるよ。偉いでしょ? こんだけやってきて未だにパクるのさ(笑)。

 

撮影:小林裕和