わが子は“自分の意見が言える子”、“素直に感情を出せる子”に育てたいですよね。
でも、子どもがうるさいほど質問してきた、注射で泣いた…など、同じ行動をしても、親により対応が違ってきます。果たして、子どもの心は?将来は?
『「テキトー母さん」流子育てのコツ』の著者の立石美津子がお話しします。
病院の待合室での光景その1
筆者が通院しているアレルギー科のクリニックの待合室では、様々なタイプの親子に出会います。長い待ち時間は案外暇なので“電車内で化粧をする女性の顔”をつい観察してしまうのと同じように、あれこれ考えてしまいます。
ある日、インフルエンザの予防接種でしょうか、診察室から酷く泣く子どもの声が聞こえてきました。子どもは待合室に戻ってきとき、身体全体をしゃくりあげてヒックヒックと泣いていました。
その時の会話が…
ママ「我慢して偉かったね。注射痛かったね。怖かったね、おうち帰っておやつにしようね」
また、別の日、診察室からこの間とは違う子どもの泣き声が聞こえてきました。
「ほら、みんな見ているでしょ!注射なんて痛いのは一瞬でしょ!ちっとも痛くないでしょ。いつまでも泣いていないの!」
“注射をされて泣く”という全く同じ状況ですが、「親により対応が180度違うなあ」と感じた出来事でした。
子どもが大きくなったとき
注射が痛くて泣き、“泣くのは弱虫だ”と育てられた子どもは、悲しいときは泣き、嬉しいときは喜び、悔しいときは怒るなど、感情を表になかなか出せない人になってしまうかもしれません。
どちらが痛い?
さて、子どもの立場になったとき、どちらの方が注射の痛みや不安感が和らぐか考えてみました。
「注射が怖かった。不安だった。痛かった」と泣いているのに、そのことをママに怒られる。こうなると子どもは感情の持っていき場がなくなってしまいます。
ママは「強い子に育ってほしい」という願いで言っていたのだとは思いますが、強い子になるどころか、オアシスを失った子どもは不安感が一杯になってしまいます。
「痛かったね」と痛みを共感してあげた方が、もしかして楽になれたかもしれませんね。
病院の待合室での光景その2
皮膚科での出来事です。混んでいる待合室で本棚に週刊誌や漫画が置いてありました。3歳くらいの女の子がいました。漫画を手に取りパラパラとめくっています。しばらくして、漫画の一コマを指さして「ママ~ママ~この人はどうして怒っているの?」と母親に質問しました。
すると、親が放った一言は!
「ママはその人じゃあないから、何で怒っているのかわからない!」
筆者は「うんうん、名回答!そりゃそうだ。母親の言うことはもっともだ。ママはそのキャラクターじゃあないから、その気持ちはわからないよね」と、一瞬、共感しました。
けれども、その直後の女の子はひどく落胆した表情をしていました。「ああ、ママに質問しても答えてもらえない。残念だ。もう、これからは聞くのは止めよう」とその顔に書いてあるような気がしました。そして、待合室で待っている時間、その子は二度と母親に質問することはありませんでした。
最初は「名回答!」と思いましたが、「ああ、もっと良い切り返しがあるのになあ。例えば、○○ちゃんはどう思う?」と質問を子どもに返して思考力を伸ばすとか…」。そんなことを感じた出来事でした。