望海風斗(左)と坂本昌行

 望海風斗と坂本昌行が出演するミュージカル「ファニー・ガール」が、9月8日から日生劇場で上演される。本作は、ニューヨークのブロードウェーレビュー、ジーグフェルド・フォリーズの大看板だったファニー・ブライスの伝記ミュージカルとして1964年にブロードウェーで初演。2022年にハーヴェイ・ファイアスタインの改訂台本と、マイケル・メイヤーの演出によって再演され、ブロードウェー凱旋した。今回の日本上演も、マイケル・メイヤーの演出によって生まれ変わった本作を上演する。物語は、稀代の大スター、ファニー・ブライスとその夫ニックの、波瀾万丈(はらんばんじょう)な人生と愛を描く。ファニー・ブライス役の望海とニック役の坂本に公演への意気込みを聞いた。


-出演のオファーを受けたときのお気持ちを教えてください。


望海 「ファニー・ガール」は日本でも上演されたことがある作品ですので、楽曲も作品も知っていました。王道のミュージカルという印象です。そうした作品に挑戦できる機会はなかなかないので、まず機会をいただけたことが本当にうれしかったです。ただ、劇中では、ファニーの若い頃から描かれるので、若くて元気なシーンは本当に大丈夫かなと(笑)。もちろん、ただ夢を追っているだけではない彼女の半生を生きられるというのは、なかなかない機会ですので、演じさせていただけることは光栄ですし、うれしいです。


坂本 ブロードウェーで上演していることは知っていましたし、YouTubeなどの動画ですばらしい女優さんが演じられているのを拝見して、これはすごい作品だと思いました。同時に、これは大変だなと(笑)。自分の半生を自分で歌うというのは、かなりパワーがいることなんですよ。僕も「THE BOY FROM OZ」という作品に出演したときに、歌でそのときの心情を全て表現しなくてはいけないので、かなりパワーが必要でした。なので、これを日本で上演するのはなかなか大変だろうと思っていましたが、今回、ファニーを望海さんが演じられると聞いて、きっと新たな「ファニー・ガール」になるのだろうと感じました。


-それぞれの役柄のどんなところに魅力を感じていますか。


望海 自分のやりたいことや自分の信じていることに向かって突き進む力に引かれています。誰もが子どもの頃は持っているものですが、大人になるにつれて諦めることも多くても、ファニーは諦めず、いつまでもピュアな心と真っ直ぐな情熱を持ち続けられるところがすごくすてきだと思います。


-本作では、ファニーがスターへと駆け上がっていく姿を描いていますが、望海さん自身も幼い頃からずっと芸事をされています。そうした意味で、共感するところはありますか。


望海 あります。私が10代で宝塚音楽学校に入ったときに、周りの人たちは「絶対に入れるわけがない」と思っていたはずなんですよ。高校の先生に「受けてきます」と伝えても、どこか「また来年もここに通うんだろうな」という空気があって(笑)。誰も信じてくれない中で、自分だけは「絶対に受かって、あの舞台に立つんだ」という気持ちでいました。10代でまだ何も知らないからこそ、根拠のない自信があったんです。当時は具体的にこれができると言える武器があったというわけではないんですが、ただただ好きでやりたいから、合格して舞台に立っているイメージだけを考えていました。今振り返ると、そうしたところはファニーと同じなのかなと思います。


-坂本さんはニックについてどう感じていますか。


坂本 ニックは、プライドが高くて、ギャンブラーで、ハンサムで…という説明の文言の中に、「人を引き寄せる力がある」という言葉があるのですが、このワードが僕の中で引っかかっていて。人を引き寄せる魅力のある人は、ピュアな人なんだろうと考えました。それは言葉を変えれば、もしかしたら子どもっぽい純粋なものなのかもしれない。いろいろなものに挑戦して、いろいろな失敗をして、いろいろな人を傷つけているかもしれないけれど、その根底にあるのは、ピュアな思いがあるからなのだと。だから、何事にもワクワクしながら臨めるのだと思います。目指しているものは違うのかもしれませんが、同じものをファニーにも感じたのかなと思います。


-ニックのプライドから不協和音が起こっていくというところは、理解できるところもありますか。


坂本 愛する女性をサポートしようと思っていたけれど、自分もトップを目指したい。土俵は違うけれど、好きな人がどんどん売れていくことで、反比例して自分がどんどん下がっていく。そうしたジレンマは、必ず出てくると思うし、手放しにおめでとうと言えないのは、人間としてあることだと思います。


-本作のどんなところに魅力を感じていますか。


望海 サクセスストーリーのように見えますが、ニックを始めとした人と出会って、お母さんの愛を感じる、深い愛を描いた物語でもあると思います。決して分かりやすいハッピーエンドではないけれど、傷ついて、失敗しながらも、最善の道を選んでいくというところは、大人になった今、心に響くものがあります。


坂本 僕は、非常に人間味あふれる作品だと感じました。エンターテインメントを求める人たちを描いた物語ですが、裏も表も、良い悪いも表現されていて、悪いときこそ母親や仲間が支えてくれる。逆に良いときは、それを聞きつけて利用する人間がいる。土俵は違っても、誰しもが経験するストーリーなのではないかと思います。


-望海さんと坂本さんは、今回初共演となりますが、お互いにどんなイメージを持っていましたか。


望海 坂本さんはたくさんの方を魅了されてきた方です。お会いするまでは舞台に立たれているときのままのイメージがあって(笑)。ですが、実際には、すごく紳士で温かくて、イメージとは真逆でした。(ビジュアル撮影では)すごく気を遣ってくださって、いろいろなお話をしてくださって、その場の空気をほぐそうとしてくださるので、気を遣っていただいて申し訳ないなと思いながらも甘えてしまいました。


坂本 ステージを拝見して、役と真摯に向き合って、純粋に、素直に表現される方だなと感じました。月並みな言葉で申し訳ないですが、「うまいな」と。やっぱり出るべくしてここまで来られた方なのだと思います。とにかく足を引っ張らないようにしたいと思っています。


-ところで、ファニーが力強く舞台に立つ姿は、時代を経ても魅了されるものだと思いますが、お二人が仕事に臨む上で、原動力となっているものは?


望海 来てくださるお客さまのためでもありますが、結局は、自分のためにステージに立っているのだと思います。一番、生きていることを実感できるのが、私にとっては舞台に立っている時間なんです。コロナ禍で、ステージに立てなくなったときにそれを強く感じました。どのお仕事でもそうだと思いますが、楽しいだけでなく、苦しみもあり、でも、それを味わえることもすごいことだなと思っています。ずっと舞台に立っているのだろうと思います。


坂本 いろいろな作品、役者さんと出会えることは、この職業の魅力の一つだと思います。新しいものに出会えること、それを経験できることがとても面白い。作品や役によって、自分が普段は言わないことも平気で言えます。それもまた楽しいです。望海さんもおっしゃっていましたが、苦しいことすらも自分を高めてくれる一つの材料だと思えます。それに、単純にこの仕事が好きなんです。


-では、ファニーとニックの波瀾万丈の人生を描いた物語ということにちなんで、お二人の人生でこれだけは欠かせないというものは?


望海 人と関わり合うことです。仕事でいろいろな方と知り合って、知らないことを知れるということが私にとって大切です。プライベートでも、いろいろな人と会って、新しいものを見たり、食べたり、話すということが好きなので、人と関わることは欠かせません。


坂本 「とにかく楽しむこと」です。難しいことを難しい顔をして難しく考えていると、「難しい」しか残らないじゃないですか。難しいことを違う側面から笑ってみたら、意外と難しいことも悪くないんだなと思えることがあったので、とにかく楽しんでみるようにしています。緊張も楽しんでみたら、意外と自分自身を俯瞰(ふかん)で見て笑い飛ばせるので、とにかく楽しむことから始めようと僕は思っています。


-最後に、公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。


望海 いろいろな世代の方に見ていただけたらうれしいです。リバイバルされて、新たなところもあると思いますので、これまでと違う「ファニー・ガール」の世界を知っていただけるのではないかと思います。ぜひ、楽しみに劇場までお越しください。


坂本 元気とパワーと自信をもらえる作品だと思っています。ファニーの半生を自分に置き換えて、さらにもう一歩頑張ろうと思ってもらえたらと思います。


 ミュージカル「ファニー・ガール」は、9月8日(火)~29日(火)に都内・日生劇場ほか、大阪、福岡、愛知で上演。