日本の音楽シーンの夏の風物詩と言ってもいい『FUJI ROCK FESTIVAL』を筆頭に、いまや春夏秋冬、1年を通して音楽フェスが花盛りだ。その各フェスの多趣彩々なスタイルを様々なジャンルの音楽を多くの人が心から楽しみ、ピースな空間が出来上がる。今現在も世界のどこかで開催されているかもしれない音楽フェスというものは、そんな、音楽を通じて人と人を繋げて笑顔の花を咲かせるという素晴らしい役割を担っている。
そして、'12年2月18日、ここ日本の渋谷界隈を笑顔で埋め尽くさせたのが、この『YATUI FESTIVAL 2012』だ。そのオーガナイザーは、やついいちろう(以下やっつん)。お笑いコンビ・エレキコミックのメンバーであり、『ROCK IN JAPAN FES』や『COUNT DOWN JAPAN』を始めとする数々のフェスにDJとして出演し各会場をガンガンに沸かせ、ロックやJ-POPやアイドルソングなど日本の名曲たちを独自のセンスでピックアップしたMIX CDシリーズもリリースしている彼が、ついに自身でもフェスを開催を実現してしまったのだ。やっつん自身が敬愛してやまないに違いない超大物アーティストから新鋭まで超豪華な面々が集結し、お笑い界の中でもトップクラスの音楽フリーク・やっつんの“音楽愛”が爆発した一日──。会場となった渋谷・円山町一体のライブハウスを駆け回りながら音楽という存在を誰もが心からの笑顔で楽しんでいた一日の、僕もいち音楽ファンとして思いっきり堪能させてもらったその楽しさをこのレポートから少しでも感じていただけたら幸いだ。
入場規制がかかったレキシ
総勢81組の出演者が渋谷O-EAST~duo MUSIC EXCHANGE~O-WEST~O-nest~O-Crestのステージに立ったこの日、このアクトを取るとあっちのアクトが立たず、この人達も観たいがあっちも観たい……。複数会場でライブが同時開催されるフェスならではの悩みにも楽しさを感じながら、まず観ることが出来たのはO-EASTのレキシ。
元SUPER BUTTER DOG のメンバーであり、現在は中村一義らとともに100sのメンバーとして活動する池田貴史がフロントマンを務めるプロジェクトは、そのユニット名通り、言ってみれば“歴史”の伝道師(笑)。誰もが知っている日本史ネタにユーモアセンスをたっぷり散りばめた楽曲の数々は、バカバカしくもあり(ほめ言葉です!)、そこはかとなく知性を感じさせるようなさせないような独特すぎる世界観!金ピカの甲冑に身を包んだやっつんも登場した『きらきら武士』は、まさに“キラキラ星”のようなミラーボールの光がムーディーに輝く中で、池田が高らかに歌い上げるメロディにキュンキュンきてしまう。武士!武士!武士──!池田とオーディエンスがコール&レスポンスしているフレーズは冷静に考えると「何なんだこれは!?」と首を傾げてしまうが(笑)、超本格派なファンキー・サウンドと池田のソウル・フィーリング抜群なボーカル・ワークはあまりにも魅惑的。豊か過ぎるほど豊かな遊び心をおふざけには感じさせない理由は、その見事なパフォーマンス・スキルがあるからこそだ。そして、『妹子なぅ』は“マウス小僧JIROKICHI(堂島孝平)”、『狩りから稲作へ』は“足軽先生(いとうせいこう)”&“東インド貿易会社マン(グローバー義和/Jackson Vibe)”がステージに合流!O-EASTのオープニング・ステージを華やかな共演で飾ってくれた。
レキシを最後まで見届けてロビーに出てみると、O-EASTでDJを務めていたGOING UNDER GROUNDの松本素生と遭遇。物販ブースに出てきてファンと気さくにコミュニケーションしている姿が、とても微笑ましい。duo MUSIC EXCHANGEのトリをGOING UNDER GROUNDで務める彼とは個人的に久しぶりの対面で、ガッチリ握手を交わしてしばし会話できたことも嬉しかったが、「祭りですから!」と言いながら見せた笑顔は彼自身もこの『YATSUI FESTIVAL』の明るい雰囲気を楽しんでいることをうかがわせて、さらに嬉しい気持ちになる。
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