愛しすぎて(!?)食虫植物を食べちゃった。

木谷さんの食虫植物への愛は、鑑賞・育成だけにとどまらず、調理して美味しい食べ方を研究するまでに至っている。

ウツボカズラのフライ、ウツボカズラにご飯を詰めたウツボカズラ飯……。奇想天外にも思えるが、マレーシアの山岳民族は携帯食としてウツボカズラ飯を食べるらしい。持ち運びしやすく、捕虫器内の消化液には殺菌効果もあるのだとか。ちなみにウツボカズラのお味は酸っぱいそう。

探究心旺盛な木谷さんは、なんと『食虫植物フルコース』まで作ってしまった。サラダ、鉢植え風フライ(鉢植えから伸びたつるの先にある捕虫器が、そのままフライになっているように見える!)、チョコレートコーティングしたものなど、食虫植物づくしのメニュー。

しかし、調理中はかなりの違和感と罪悪感にさいなまれたらしい。食虫植物をペットに置き換えればその気持ちが良く分かる。

木谷さん「料理を作っているうちになんだか辛くなってきてしまいました。可愛がることと、食べることは別ですね。もう食虫植物料理を作ることはないと思います……」

さらには「昆虫料理研究会」ともコラボ。マダガスカルゴキブリの素揚げとウツボカズラの天ぷらはあっと言う間に無くなってしまったとか。また『蝉&食虫植物バー』というイベントも開催された。大皿にてんこ盛りの蝉、なかなか衝撃的なビジュアルだ。セミのコンフィ、セミの親子串揚げ、セミ味噌などなど、ユニークなメニューは大人気だったそうだ。

木谷さん「食虫植物をあまり料理したくないのは、心情的なもの以外の理由もあって……。結構値段が高いんですよ。でも、蝉ならそのへんでたくさん取れて、タダだから良いですね」

昆虫食も極めつつある木谷さんは、昆虫食に関する本も共著で出版している。虫嫌いの人が見たら卒倒してしまいそうな表紙だが、見方によってはなかなか美味しそうである。

・桜毛虫のおこわ・・・桜の葉を食べて育つので、ほんのり桜味がするとか。
・バッタフライ・・・羽を広げるようにして揚げるなど、ビジュアルにもこだわった。
・カミキリムシの照り焼き・・・木谷さん曰く「想像するだけでヨダレが出る」程美味しいらしい

愛する食虫植物と同じように、虫を食べてみたい! という気持ちもあったのだろうか? 物事の見た目やイメージにとらわれず、どんどん新しい世界への扉を開けていく木谷さんの好奇心と探求心は素晴らしい。

その他にも多数の本を出版している木谷さん。食虫植物と多肉植物を扱った『マジカルプランツ』は台湾でも出版されている。

サラセニアという食虫植物の魅力を活かしたアレンジメント作品を紹介する『サラセニア・アレンジブック』は、美しい写真も特徴的。食虫植物をテーマにした小説集には、ある日妻が虫を食べるようになるというホラー的な作品「食虫植物の妻」 も収録されており、こちらも興味深い。

色々な食虫植物の写真、貴重な体験談、面白い裏話などが満載で、 二時間のトークショーはあっという間に終了。木谷さんの言葉の節々、食虫植物について語るときの瞳の輝きから、本当にこの人は食虫植物を愛しているんだなぁ、ということが伝わってきた。

そして、食虫植物とは、こんなにも魅力的で興味深いものだったのか!少し大げさかもしれないが、感動に近い驚きと喜びを感じた。