(C) 2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会

 そのタイトル通り登場人物たちの“全力疾走”が大きな見せ場となる『駆込み女と駆出し男』と『ラン・オールナイト』が16日から公開された。

 『駆込み女と駆出し男』は、江戸時代、幕府公認の縁切り寺である鎌倉・東慶寺に駆け込んださまざまな事情を持った女たちを描く群像時代劇。彼女たちの身柄を一時預かり、離縁の調停を行う御用宿の居候で戯作者見習いの信次郎(大泉洋)が語り部的な役割を果たす。

 原案は井上ひさしの『東慶寺花だより』だが、監督・脚本の原田眞人はタイトルを大胆に改変。東慶寺に向かうじょご(戸田恵梨香)が足を痛めたお吟(満島ひかり)を大八車に乗せて疾走、その後を追う信次郎というシーンや、大泉をはじめ、登場人物が早口でせりふをまくし立てるシーンにタイトル通りのスピード感を出した。

 その反面、市川崑の諸作や黒澤明の『赤ひげ』(65)からの引用を行いながら“静かなシーン”もきっちりと見せる。動と静の対照の妙が楽しめる一編になっている。 

 

 一方、『ラン・オールナイト』は、老年に差し掛かってから“アクション俳優”として活躍するリーアム・ニーソンが夜のニューヨークを疾走するアクション劇。

 ニューヨーク、ブルックリンを牛耳るマフィアのショーン(エド・ハリス)と、彼の下で殺し屋を務めてきたジミー(ニーソン)。長年苦楽を共にした2人は固い絆で結ばれていたが、ある日、ジミーは息子を守るためにショーンの息子を射殺してしまう。一転、ショーンの報復から逃れるため、ジミー親子の逃亡が始まる。

 監督は『アンノウン』(11)『フライト・ゲーム』(14)でもニーソンとコンビを組んだジャウム・コレット=セラ。ニーソン対ハリスという大ベテラン俳優同士の愛憎対決が見ものだが、ほかにも、警察との裏のかき合い、殺し屋同士の対決など、重層なバトルが展開する。

 そして激しいアクションはもちろん、悪の道で生きてきた父の因果が子に報いという、二組の父子の悲しい物語が本作の根幹を成す。ニーソンとハリスに加えて、ジミーの兄役でニック・ノルティ、刑事役でビンセント・ドノフリオも登場。『駆込み女と駆出し男』が女性中心の映画なら、こちらはまさに“走る男たち”の映画だ。(田中雄二)