よかれと思ってしたことが悲劇を生むことも…

回避策は、生前分与や保険の活用などさまざまだ。しかし、よかれと持ってしたことが、悲劇的な結末を生むことがある。佐藤氏が関わったもう一つの例を見ていこう。

3年前に夫を亡くした夫人は、自分が亡くなったときに再び名義を変えるのが面倒だと考え、息子名義にしてしまった。ところが、その息子が急死してしまった。さらに、息子の嫁から「自宅の名義は私のものになるから出て行ってほしい」と言われてしまい、泣く泣くマイホームを手放すハメになってしまった。これは、相続できる範囲と順番を知らなかったことから起こった悲劇だ。

相続の優先順位は、妻が最優先で2分の1。次に子ども(2分の1を子どもの数によって分割)、子どもが亡くなっていた場合は孫。亡くなった方に子どもがいなかった場合に初めて、親のもとへ入ってくる仕組みだ(未婚で子どももおらず、両親も他界している場合は兄弟姉妹や甥姪が優先順位となる)。

もちろん法律をきちんと把握しておくことは大切。しかし、それよりも先に家族の対話を密に行うことが大切。人間はいつ亡くなるかわからない。終活はシニア層だけのものという概念を、取り払うべきなのかもしれない。
 

「ぴあ中部版」映画担当を経て上京、その後はテレビ情報誌、不動産雑誌・広告などの編集・ライターを務める。著書に『年収350万円でも家が買える』(2014年・彩図社刊)。また、映画監督としては、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭などで注目され、2002年「異形ノ恋」(出演・西川方啓、木下ほうか、寺田農)でデビュー。