「また、山田くんがおかしくなったら赤羽に行きましょう。」

いよいよイベントはラスト。最後は番組ゆかりのグッズを大放出、という太っ腹なコーナーです。まずは山下監督の監督作DVD(山田さんが買ったけど未開封)にサインを入れて。そしてレッドウィングマークが入ったブーツも、レッドウィングマークの入ったTシャツも大放出。番組内では「もうこれでGUCCIじゃないです。」って言って山田さんがタグを切っちゃったやつですね(笑)。

そしてそして、山田さん着用のザ・サイコロマンTシャツまで!さらにマスターによる掛け軸「世の中捨てたもんじゃねーぜ」と、さらに綾野剛さんの掛け軸「人生×人」、そして赤羽の母による無料占い権。あまりにもレアな1点ものばかり。当たった方、本当にうらやましいです。

さて、グッズ放出コーナーのラストを飾るのは、鷹匠大和田さんの連絡先! もちろん大和田さんは女性に渡ることを期待していたのですが…。1回目の抽選で出てこず、2回目の抽選でも出てこず。何度抽選しても、当選者が全然名乗り出てこないんですよ。果たしてその番号の人は帰ってしまったのか、それとも番号受け取り拒否なのか…。

大谷さんが「これは、ええ…。帰られてますね…。」とフォローを入れて3回目の抽選、やっぱり出てこない! 山田さんも思わず「おい!いるだろう!」と呼びかけるもやーっぱり出てこない(笑)。4回目、大和田さんが番号を読み上げると「ワァ!」という声にならない声が。やっと当選者の方がいたんです。でもその方「私…主人がいます」と衝撃の告白。ここで山田さんが驚愕の決断を下します。「独身女性が出るまで引きましょう!」と。いや、そういうイベントなんですかこれ?!(笑)。

そして運命の5回目、大和田さんの読み上げた番号は…会場にいた! みんなで固唾を飲んで見守ります。「結婚はしてらっしゃいますか?」「独身…です!」「鳥は好きですか?」「好き…です…」おめでとうございます! カップル成立です! って、そういうイベントじゃないですけども(笑)。スペシャルイベントにして、ついに山田さんが本当の意味で大和田さんの鷹になった瞬間でした。いや、この時点でイベント開始から3時間近く経ってましたからね。最後でまた怒涛の展開をしてしまうのが赤羽パワーということでしょうか。

イベントの締めくくりは全員集合での大団円。山下監督は「アカイヌ、いや、アカバネ…。もう、よくわかんないことになって…さっき、みんな『I LOVE YOU』聴きましたよね? 体感時間がおかしくなってますよ」と。そうそう、もう盛りだくさんすぎて訳がわからないイベントでした。

そして松江監督は「本当に少人数で制作した作品が、ここまで広がるとは…。また、山田くんがおかしくなったら赤羽に行きましょう。」と締めてくださいました。いつか、山田さんが赤羽に戻る日は来るんでしょうか?そんな日がまた来てほしいような、あの夏だけの思い出になるのも美しいような…。

ラストは「山田孝之の」「東京都」「北区」「赤羽~!」というコールアンドレスポンスで会場が一体に。照れながらも会場に呼びかける山田さん、そこには赤羽ワールドに染まった山田さんも、日本を代表する俳優の山田さんも、いろいろな山田さんがまとめてそこにいるような感がありました。虚々実々の赤羽ワールドが、しっかりと山田さんの一部に吸収された、ということなのかもしれません。

現実も虚構もない!「人生が芝居なんだよな!」

振り返ってみると、このイベントを通して、赤羽を一度出た山田さんが、どこかにまだ赤羽的な何かを残しつつ、それでいてひとりの役者、山田孝之としてここにいる、という姿が明確になった感がありました。山田孝之さんの赤羽を通じた自分探しは、ここで一件落着、というところでしょうか。

この「自分自身を探す」というテーマは、番組のひとつの柱でした。イベントの最初に歌われた斎藤さんの『永遠の、少年』では「生きる意味をください。死にゆく意味をください。」と歌われます。番組のオープニングでもエンディングでもなかった『永遠の、少年』からこのイベントが幕を開けた、という構成は、非常に心憎いものだったなぁと思います。

さらにオープニングの『中庸平凡パンチ』でも「Searchin’ Searchin’」と繰り返されますし、エンディングの『TOKYO NORTH SIDE』のサビでも「見つけてみせる RED WING」と歌われているんです。番組全体を通して見ても、自分自身を探して赤羽にたどり着いた山田さんが、最終的には自分自身が役者として生きている/生きていくという当たり前の事実にたどり着いて赤羽を出ていく、という展開でした。なんというか、まるで童話「青い鳥」のような(赤羽なのに!)、禅絵の「十牛図」のような流れです。振り返ってみると自己探索の王道だと言えるでしょう。

そんな山田さんを迎え入れ、そして送り出した赤羽軍団の強烈なキャラクターも印象的でした。普通、1000人規模のステージに立ったら、緊張していつもの通りに出来なくて当たり前だと思うんです。でも、赤羽軍団の誰ひとりとしてキャラクターのブレを感じさせなかった。あまりにも原作や番組そのままで驚きました。

満員のリキッドルームで、自分の個性を無自覚でも丸のまま出せる…それが赤羽の皆さんの強度なのかもしれません。現実も虚構もない! ただそこにいるだけなんです。番組中のジョージさんの名言を借りれば「人生が芝居なんだよな!」を地で行っている人たち、ということになるでしょうか。

このドキュメンタリードラマが、どこまで脚本があり、どこまで意図されずに展開していったものなのか、それはわからないですし、むしろわからないところがとても良いのだと思います。MCの大谷さんも序盤で「裏話とか聞きたくないですもん。この番組が好きすぎて」とおっしゃっていましたが、まさにそれです。目の前にある、それこそが虚虚実実ひっくるめた赤羽ワールド、ということだと思います。

いかがだったでしょうか、「山田孝之の東京都北区赤羽」レポート。異例なほどの長文になってしまうぐらい凄いイベントだったこと、凄い番組だったことを少しでも感じていただければ幸いです。自分もいつか、非日常の日常を探して、赤羽の町を歩いてみようかな…。今回のレポートは以上です。