環境問題はすぐ自分の隣で起きるかもしれない
中国のとある村で、製紙工場が汚染問題を引き起こす。
ただ、村にとって重要な産業である工場に、ほとんどの村民は異を唱えることができない。
むしろ擁護の方へと回る。
その中で、あるひとりの母親が家族の心配を振り切って告発に踏み切る。
結果、家族は離散とはいわないまでも関係はほぼバラバラ。
それでも母は恐れることなく再び問題の申し立てに奔走する。
近所でたまたまおきた汚染の問題が、いつしか家族の問題にすり替わって一家が崩壊していく皮肉と不条理。
この作品は、環境問題は人体への影響だけではなく、こういった家族や地域社会のつながり、そこにある生活までをも破壊していってしまうことをまさに物語る。
そのことに思いを馳せたとき、この作品は他人事ではなく、自分の身に寄せて考えられるものになるはずだ。
また、親の子への想い、娘の母への想いが画面から溢れる作品は、一家の肖像を描いた家族ドラマとしても見応えあり。
親の気持ちがわかるようになってきはじめる子世代も、子に心配をかけたくない親世代も、登場する一家の誰かしらに共感するところがあるのでは?
ダムは撤去すべきか
日本でも身近に存在するダムにスポットを当てた『ダムネーション』もまた興味深い作品だ。現在アメリカには約7万5000基ものダムが存在しているが、ここにきて経済面からも環境面からも負の面が大きく、撤去する選択がとられはじめているという。
その結果、すべてがそうなるわけではないが、ダムの撤去で本来の姿を取り戻した河川が出てきている。
本作は、こうなる前からダム撤去を訴えていた人々の活動を通して、変わりつつあるダムの意義について見つめる。
実はこのダムの撤去の動きが出ているのはアメリカだけではない。
日本でも少しずつではあるがその動きが出てきている。
そして、ダムを考えることは、山や川の自然を考えることとも密接につながっている。
私たちの暮らしに欠かせない水の貯水池のイメージにくくられがちだが、実はそうではない違う顔があることを我々はもっと知るべきかもしれない。そんなことを考えさせてくれる一作といっていい。