今をときめく「気になるあの人」が、どのような環境で育ち、どのように親が関わったことによってその個性が磨かれたのでしょうか。その『原石の磨き方』を明らかにしていく当インタビュー特集第4回目。
大学在学中に出版した『五体不満足』(講談社)がベストセラーになり、その後も小学校教諭等を経て、様々な活動をされている乙武洋匡氏にインタビューを行いました。
※この記事はConobieで2015年7月6日に公開されたものです。
母が私に対して初めて抱いた感情は「喜び」だった
かわいい――。
母が初めて私を目にした瞬間、口にした言葉だそうです。
母と私が対面したのは、出産から1ヶ月後でした。病院側が必要な検査や、親と対面させるための準備をしてくれていたためです。
母がびっくりして気を失って倒れてしまうかもしれないからと、先生方は別室にベッドを用意するなど準備してくださっていたそうなんですが、きっと拍子抜けだったと思いますよ(笑)。
もちろん、両親にもその前後でいろんな葛藤がなかったわけではないと思います。
例えば赤ん坊のころ、両親を悩ませていたのは、とにかく眠らないことと、ミルクを飲む量が極端に少なかったこと。これにはさすがの母も不安だったようです。
でも、両親は悩んだ末に開き直ったのだとか。
「他の子と大きく違う形で生まれてきたんだから、寝る時間やミルクの量を比べたってしかたがない」「これくらいは、誤差の範囲」だと(笑)。
両親がそんな風に受け止めてくれたので、私は手足がなく生まれてきたことは、ある意味ラッキーだったんじゃないかとも思うんです。
そういう両親のスタンスが、私の人生の支えとなっている自己肯定感―自分を愛する力―を育んでくれたのだと感じています。