「若松マーケット」の歴史

当時の話を聞かせてくれた佐藤さん

佐藤さんは元々、若松マーケットでバーテンダーをしていたが、今は、気さくな飲み屋の親父さんだ。季節料理「詩」は1967(昭和42)年創業の老舗居酒屋。

若松マーケットから少し離れた横須賀市東逸見(へみ)町の「詩」

若松マーケットは1946(昭和21)年、戦後の闇市としてスタート。横須賀の人々の生活を支えてきた。昭和30年代になり、露天から店舗を構える店が登場。生活用品や飲食店100軒以上が軒を連ねるようになり、1959(昭和34)年には、若松新生商業組合が誕生。闇市、青空市場の名残をとどめる「若松マーケット」と呼ばれるようになった。

昭和30~40年代の若松マーケットの様子。当時は店舗兼自宅という店も多かった(提供:若松マーケット)

人で溢れていたという当時、常連だったのが「どぶ板通り」で米軍相手の店で働いていたバーテンダーやバンドマンたち。自分たちの店が終わった深夜、若松マーケットに足を運び、朝まで飲んでいたらしい。

横須賀ブラジャーは若松マーケットの希望の星!

オイルショックにバブル崩壊、リーマンショック。急激に悪化した日本経済の影響は、若松マーケットにも大きな影を落とした。

減る一方の客に頭を抱え、現状を打破しようと持ち上がったのが、レトロな雰囲気漂う若松マーケットらしさを生かした町おこし。

その目玉として2011(平成23)年に誕生したのが、ブランデーを使った地カクテル、横須賀ブラジャーだ。ブランデーは昭和40年代にブームとなったお酒。昭和レトロな街には、昭和を代表するお酒が似合うということで使われることになった。

若松マーケットの地カクテル、横須賀ブラジャー

横須賀ブラジャーは、ブランデーにジンジャーエールを加え炭酸でわったカクテル。クラッシュアイスをたっぷり使った、芳醇な味と香りと清涼感が特徴だ。

苦心したのは、ジンジャーエール選び。

一般的に売られているものは甘みが強くカクテルには向いていないため、メーカーに辛みが強いものがないか打診。
1年近い試行錯誤を重ね、ベストな組み合わせが生まれた。

完成までに何度も試作を重ねていきついた組み合わせ

ニッカのVSOP、ウィルキンソンのジンジャーエール(しかもペットボトルのもの!)と炭酸が「横須賀ブラジャー」の基本材料。グラスもオリジナルだ。

赤いネームのほうが当時からのもの。現在は、右側の白いネームのものに移りつつある
ピンクのドレスのレギュラーママと、白いドレスのちーママのポスター

名前を“若松”ではなく“横須賀”としたのは、広く横須賀の名物にしたいという願いから。また「ブラジャー」は、ブランデーとジンジャーエールの合成語。正式には、最後の“ジャー”を上げて発音する。ちょっとエロティックなネーミングも素敵。