決心するまでの長い1ヶ月
さて、この羊水検査は羊水に胎児の染色体が浮かぶ妊娠15週に行われるものでした。
更に羊水検査をしたからとその日に結果が出るわけではなく、当時は染色体を培養するために検査日の1ヶ月も先の20週に入らないと結果は出ない状態でした。
日本では母体に危険が及ぶということで21週と6日までしか中絶は認められていません。ですから医師から「検査結果が出て1週間以内に産むか産まないか決めてください」と言われました。
20週と言えば妊娠5ヶ月で、胎動も感じている時期です。ポコポコと鳴る胎動を感じながら結果が出るまで相当悩みました。
でも、よく考えてみたら悩むこと自体おかしいのです。
はっきり言って「染色体異常の子どもだったらいらない」から検査を受けたのです。どんな子どもでも産む覚悟ならば最初からそんな検査受けなかった訳ですから、今更、「産む、産まない」と悩むこと自体、矛盾していることだったのです。
医師からも「この検査を受けてから悩むあなたの態度はおかしい!」と厳しく指摘されてしまいました。
結果は異常なしでした。
産んで、育ててから、下される診断
でも、2歳になっても声を出さず、人に関心を全く示さない我が子を「怪しい」と思い小児神経科を受診しました。そして「お子さんは知的障害のある自閉症です」と診断されました。
でも、ここで「だったらこの子はいりません」とは言えませんでした。
今の私は息子の存在の存在が生き甲斐であり、成長は緩やかですが母として幸せを感じています。
そのために仕事もし、日々の嫌なことも乗り越えられます。一日でも自分が長生きして子どもを支えてやりたいと思っています。
もちろん、羊水検査で自閉症かどうかはわかりませんが、もし、あの時、検査の結果“お腹の赤ちゃんに障害があります”と言われていたら「私はそのまま妊娠を継続していただろうか…」と思うと想像しただけで怖くなります。
この子がいない人生を歩んでいたと思うと悲しくなります。
親がすべき事は?
たとえ健康な子どもが生まれたとしても、非行に走ったり、病気や事故にあって後天的に障害を持つなど人生には予期できないことが起こります。
また自分自身も今後、事故や病気になったり、統合失調症や鬱病などの精神疾患を患うかもしれません。
その時、「こういう子は受け入れない。こういう子だったら受け入れる」という“条件付きの愛”にはならないと思います。
妊娠中、たとえ検査を受けて選ばれた命であっても、出産後はどんな状況になっても受け入れなくてはならないのが親なのです。