撮影:熊谷 仁男

映画のヒロインと同い年の芦田愛菜は何を感じたのか?

自分の気持ちを言葉にするのが苦手な中学生の琉花は、夏休み初日に部活でチームメイトと問題を起こしてしまう。それによって、以前から母親とも距離を置いていた彼女は、長い夏の間、学校でも家でも自分の居場所を失うことに。

そんな琉花が、父親が働く水族館のある海辺の街で“ジュゴンに育てられた”不思議な兄弟、“海”とその兄の“空”と出会うが……。

『海獣の子供』6月7日(金)公開 ©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会

映画『海獣の子供』は、琉花がひと夏のかけがえのない出会いの中で、命の誕生の秘密や大自然の神秘に触れながら成長していく姿を、美しくも、まるで生き物のようなダイナミックな映像で描き上げた壮大な海洋冒険ファンタジー。

本作で14歳のヒロイン・琉花の声を担当した芦田愛菜が、アフレコ時のエピソードや不思議な少年“海”に命を吹き込んだ同い年の石橋陽彩(17年の『リメンバー・ミー』日本語吹替版で主人公の少年ミゲルの声を担当して話題に)の声の印象から、映画が描く壮大なテーマに対する自らの考え、普段の生活で大切にしていることまでたっぷり話してくれました。

「素直になれない女の子」に共感

――五十嵐大介さんの原作のコミックを最初に読まれたときはどんな感想を持たれましたか?

絵がすごく繊細で、綺麗で、とても好きな雰囲気だな、と思いました。

そして、今回の映画もそうですけど、水の動きがダイナミックで、生きている感じがして、気持ちがよかったです。しかも原作は白黒なのに、海の中に本当にいる感じがして、不思議な雰囲気に包まれました。

――ストーリーについてはどう思いました?

この後どうなるんだろう?と先の展開が気になったので、一気に読んじゃいました。

――芦田さんが声を担当された琉花はどんな女の子?

心の中では思っていることがたくさんあるし、いろいろ感じているのに、それをうまく言葉にできなくて、誰かにそんな自分の気持ちを分かって欲しいのにそれも言えない。

そんな風に、素直になれないところがあるけれど、自分でもそれがもどかしいと感じている女の子なのかなと思いました。

――そういった部分は共感できましたか?

そうですね。私も自分に素直になれない瞬間があったりするので、すごく共感できました(笑)。

「心の声を表現するモノローグ」ではすごく感情を入れた

――これまでにも声のお仕事をされていると思いますが、今回特に意識したことは?

心の中で思っていることをうまく言葉にできない女の子なので、心の声を表現するモノローグが多かったんです。

なので、心の中を伝えるモノローグではすごく感情を入れて、豊かに雄弁になるようにして、逆に実際に口に出して言うところはうまく話せないように表現して、それが伝わるようなお芝居をしました。

――声のお仕事は表現の仕方や筋肉の使い方が普通のお芝居と違いますよね。

普段のお芝居はちょっとした目線の動きや動作で表せることもありますが、アニメーションの場合は声だけでそのキャラクターのすべてを、彼女がどんな気持ちなのかを表現しなければいけないので、そういうところはやっぱり難しいですが、すごくやりがいがありました。

――渡辺歩監督からはどんな指示がありました? 琉花を演じる上でのヒントになるような言葉はありましたか?

監督は私が声を録音するブースの中に一緒にいてくださって、この作品に対する想いだったり、どういう作品にしたいのかなど、琉花の気持ちやそのシーンの意味を直接うかがうことができました。

何回かテイクを重ねながら、私の方から監督に「ここはもっとこういう風にした方がよかったですか」と伝えて、監督が「そうだね」とか「ここはこれでいいんじゃないかな」と返してくださったり。

そういうコミュニケーションをとりながら、こだわってやらせていただけたのは嬉しかったです。

――原作者の五十嵐大介さんともお話されました?

はい。原作に「ギャッ」というひと言を描いた大きな一コマがあるんですけど、どういうイメージでその一コマを描かれたのかをお聞きして、その声をどう表現すればいいのかということを五十嵐さんと監督、私の3人で話し合ったりしました。

――この作品のアフレコはおひとりずつ声を収録されたみたいですけど、ボイスキャストは同世代の方が多いですよね。声のお仕事も同世代の人とやった方がやりやすい、みたいなことはありますか

同世代の人……というより、石橋陽彩さんのお声を初めて聞いたときに、昔から知っている友だちみたいに、あっ、“海”くんだ!と自然に思えたんです。

それに、今回は私より先に石橋さんが声を収録されていて、私が声を録音するときにはすでに“海”くんの声が入っていたので、かけ合いのシーンなどはとてもやりやすかったです。

――芦田さん自身は、自分と同世代のキャラクターの声をやるときと世代の違うキャラクターの声を表現するのとではどちらがやりやすいですか?

今回の琉花は私と同い年の14歳という等身大の設定だったので、共感できるところもたくさんありましたし、演じやすかったです。

でも、世代の違う役を演じるのも、例えばどうやったら幼い感じになるだろう?と考えながらやるのが楽しくて。だから、どちらも好きですね。