『海獣の子供』6月7日(金)公開 ©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会

水の表現が、命を感じるようなものになっている

――完成した映画を観た感想をお聞かせください。

水の表現が特にそうなんですけど、映像と音がお互いを引き立て合っていて、命を感じるようなものになっているのがいいなと思いました。

そして、私はこの作品が伝えたいことは答えが出せるものではないのかな、と思っているんですが、そのこととも関係した好きなセリフがあって。

「人は言葉にしないと思っていることの半分も伝えられないけれど、クジラたちは、もしかしたら感じたことや思ったことを歌で伝え合っているのかもしれない」というセリフなんですけど、それを聞いたときに、この世界には言葉では表現できないことがたくさんあるのかなと思って。

それを言葉にしなきゃいけないとか、ちゃんと理解しなきゃいけないとか、そういうことではなくて、感じることが大切なのかな、と思いました。

ラストの30分は難しいことが描かれている

――受け取り方は観た人によって違っていいわけですね。

そう思います。作品全体を通してもそうですけど、特にラストの30分は難しいことが描かれていると思います。

私自身もいろいろなことを感じて、いろいろなことを考えたんですけど、いまもお話ししたように、明確な答えはまだ出せていないんですよね。

逆に、これが正解、みたいなものがあるわけじゃないのかな、と思ったりもして。

この作品にはさまざまなテーマがあるので、みなさんきっと、観たときに思うことや感じることが違うような気がするんです。

ですから、それぞれ自分が身体で感じて、その感じたことを大切にしていただけたら嬉しいなと思います。

生きることと死ぬこと、命の誕生が表現されている

――芦田さんはどんなことをこの作品から受け取りました?

生きることと死ぬこと、命の誕生が表現されていると思うんですけど、自分の命がそんなに長くはないということを知っている“海”くんと“空”くんは、死の方向から生きるとはどういうことなんだろう?って見ているんですけど、琉花は自分が生きているということを実感しながら、死ぬってどういうことなんだろう?って見ているんですよね。

そういった意味では、生きることと死ぬことは正反対のものではなく、隣り合わせにあるものなのかな、と感じました。

自分の存在意義って何だろう?

――この作品に触れて、生命や地球に対する価値観は変わりましたか?

命の誕生って何だろう? とか、自分の存在意義って何だろう? ということを、これまではそんなに深く考えことはなかったんです。この映画は、そういうことについて考えるきっかけを与えてくれた作品だと思います。

――考えた結果、どんな答えが導き出されました?

いえ、そこについてもまだ答えは出せてなくて。でも、大人になって14歳の自分を振り返ったときに、あのとき感じたことや、立ち止まって考えたことがいまに繋がっているのかなと思えたらいいですよね。

――海に対するイメージも変わりました?

海は私たちのすごく身近にあるものですけど、深海など、まだ謎に包まれている部分がたくさんあると改めて思いました。

それに、穏やかなときもあれば、怖いときもありますよね。そういう印象がより強まったような気がします。

水槽の中の“海”くんと初めて出会うシーンがすごく好き

――好きなシーンはどこですか?

水槽の中の“海”くんと初めて出会うシーンがすごく好きです。音楽が盛り上がっていくし、波やお魚がすごく綺麗で、とてもワクワクしました。

――ところで、芦田さんは泳ぎは得意ですか?

いや、そんなでもないです(笑)。だから、“空”くんに手を繋いでもらって「こうしたら速く泳げるんだよ」と教えてもらいたいです。普通の人が泳いでいる感じと全然違いましたものね。

海の中で“海”くんと“空”くんと琉花の3人が遊んでいるシーンは、本当に楽しそうで、すごく好きです。私も“海”くんや“空”くんみたいな人たちに出会えたらいいなと思いました(笑)。

――海に行ったときの何か楽しい思い出はありますか?

最近は行けていないのですが、小さい頃はGWに家族と一緒に、バケツと熊手を持って、潮干狩りに行っていました。

芦田愛菜と両親との関係

――好きな海洋生物は?

イルカが好きです。頭がいいし、可愛いので。

水族館などのイルカショーで、イルカと一緒に泳げるイベントもやってみたいし、イルカとコミュニケーションがとれたら楽しいだろうなと思います。

--琉花ちゃんはお母さんと心をうまく通わせられない女の子でしたが、芦田さんはお父さんやお母さんにしてもらったことでよかったなと思うことはありますか?

本の読み聞かせをしてくれたり、周りに本がある環境で育ててくれたことには感謝しています。

――それでは逆に、両親の反対を押し切ってやったことで、やってよかったなと思うことは?

う~ん、あまりないですね。逆に、親の言うことはちゃんと聞いた方がいいなって最近ちょっと思う瞬間がありました(笑)。

 ――琉花ちゃんと違って、お母さんに相談したり、いろいろな話もされるんですか?

そうですね。琉花とお母さんのように、お互いに分かり合えないという感じではないです。

ただ、私はポジティブなことは言えるけれど、ネガティブな感情を言葉にできなくて。

例えば、悔しいと思っていても、ちゃんと「悔しい」って言えなかったりする。そういう、自分に素直になれないところがあるんですよね。

――負けず嫌いなんですね。

そうです。負けず嫌いですね(笑)。

いま力を入れていること

――そんな芦田さんがいま力を入れていることは?

部活でマンドリンを弾いているので、マンドリンは頑張って、もっとうまく弾けるようになりたいなと思っています。

――マンドリンを始めたきっかけは?

それまでマンドリンという楽器のことを知らなかったんですが、新入生の歓迎会で先輩たちが演奏されているのを聴いて、可愛らしい音に惹かれたんです。それで、マンドリンクラブに入りました。

――どんな曲を演奏されるんですか?

歌謡曲もやりますし、もちろんクラシックも演奏します。けっこう練習して、いろいろな曲が弾けるようになりました。

――遊びでいまハマっていることは?

学校の休み時間に校庭に出て、毎日のようにバレーボールをやっていることです。

友だちと円になって、レシーブだけで繋いでいくバレーボールなんですけど、それにハマっていると言うか、自然に夢中になっちゃいます(笑)。

――そういう時間が単純に楽しいですよね。

そうですね。いまは特別なことをするより、友だちと他愛もない会話をしたり、一緒に過ごす時間が楽しいです。

――でも、好奇心も旺盛なのでは?

いろいろなものと出会うきっかけは作りたいなと思っています。ひとつひとつの出会いから、新しく知る世界もあるかもしれないので、いろいろなことに興味を持つようにしています。

 

『海獣の子供』6月7日(金)公開 ©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会

その誠実でピュアな言葉の数々から、感受性が豊かな芦田愛菜の現在のリアルがリリカルに伝わったはずだ。

映画『海獣の子供』は、そんな彼女のしなやかな感性と色鮮やかなめくるめくアニメーション表現とを呼応させながら、ほかでは見たことのない深淵な世界を映し出していく。

あなたは本作で何を感じ、どんな感想や考えを持つだろうか?

本格的な夏が到来する前に、芦田愛菜が体現した琉花と一緒にスクリーンの中の海に出かけてみてはどうだろう。

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。