「クレーン現象」「逆さバイバイ」「オウム返し」なんだか聞き慣れない言葉ですね。
これらは、ある特性を持つ赤ちゃんが取る行動のひとつだと言われています。
『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』の著者の立石美津子が解説します。
「クレーン現象」「逆さバイバイ」「オウム返し」って?
発達障害の代表である“自閉症”。
自閉症の子どもの特徴の一部に、視線が合いにくい、言葉が遅れる、友達とうまく関われない、こだわりがある、指差しをしないなどがありますが、その中に、“クレーン現象” “逆さバイバイ” “オウム返し”をする子がいます。
まず、それぞれについて説明しましょう。
クレーン現象
工事現場で砂利や土砂をかき集めるクレーン。ゲームセンターのUFOキャッチのクレーン。私達は欲しいものが取れないとき、これらの便利な道具を使います。
赤ちゃんは「ねえ、ママ、あの玩具取って」などとは話せません。そんなとき、言葉の代わりに自分の指でほしいものを指す“指さし”をします。指さしは言葉の前段階と言われています。
ところが、自閉症の子は年齢に相当した言葉がなかなか出ないことがあります。言葉の発達が遅れます。そうなると、この指さしも言葉の一つですから、これがなかなか出来ないでいます。
そうすると、指をさして「あれ取って~」の表情で親に訴えるよりも、目の前にある親の腕を道具にして取れない玩具を取ろうとすることがあります。
また、たとえばテーブルの上のジュースが欲しいとき、ジュースを指ささずにジュースに親の手を近づけようすることもあります。
この動作が工事現場のクレーンによく似ているため“クレーン現象”と呼ばれます。
逆さバイバイ
誰かと「さよなら」するときは、相手の方に自分の手のひらを向けて「バイバイ」します。
0歳後半~1歳になると、「こうやって相手に手のひらを見せてバイバイするのですよ」と特に教えなくても、自然にこれが出来るようになってきます。
これは、赤ちゃんでも相手と自分の立ち位置の違いがわかっていることを示しています。
ところが、自閉症の子は社会性、想像力、コミュニケーションの遅れがありますので、これがなかなか理解できません。
すると、「さよなら」するとき相手が手のひらを自分に向けるのを見て、これをそのまま真似して、自分側に手のひらを向けてバイバイします。これが“逆さバイバイ”という現象です。
その他、写真を撮るときにピースサインを裏表反対にしたり、絵本を逆さまにして読んだりするのも“逆さバイバイ”と似た現象です。
けれども、保育園の先生の真似をしていたり、ママに見えやすいようにと相手の座っている位置まで気遣って反対に持っているケースもありますので、逆さバイバイとは意味合いが違うこともあります。