子どもの発達は個人差が大きく、「こうした行動があったら必ず発達障害」というふうに一概には言えません。
しかし、親が他の子との触れ合いを観察する中で「他の子とは違うかも?」と違和感を持ち、それによって発達障害と判明するケースは少なくないようです。
「発達障害の場合、その特性は子どものときにピュアな形で認められます」と精神科医の岩波 明先生。
赤ちゃんから幼稚園、小学校と成長する過程で、どのような特徴的な言動が見られるのか、岩波先生の著書『発達障害の子どもたちは世界をどう見ているのか (SB新書 636)』から紹介していきます。
乳児期(0歳〜1歳まで)
大人とのコミュニケーションが大半のこの時期。人は生まれながらに他人の顔に注意を向ける傾向にあり、生後3〜5ヵ月の早い段階から視線を合わせ、見つめることができるようになります。
ASD(自閉症スペクトラム障害)においては、「視線が合わない」ことなど、対人関係の特性が挙げられますが、乳児においても、「視線を合わせる」「親の顔を見る」という本来はきわめて自然である行動は見られません
またASDでは「ジョイント・アテンション(共同注意)をしない」「指さしをしない」といった特性も見受けられます。
「ジョイント・アテンション」とは、他者の視線の先を見る行動のこと。
親が「あそこにワンちゃんがいるね」と言ったら、親の視線の先にいる犬を見ます。
赤ちゃんは言葉を操ることができないかわりに、周りの人の視線の先を見て、その気持ちを察しようとしているわけです。これらは社会性発達の重要なステップで、ジョイント・アテンションは、生後7〜8ヵ月頃から、指さしは9〜10ヵ月頃からできるようになるのが一般的です
幼児期(1歳~小学校就学前まで)
乳児期よりも特性が顕著になってくる幼児期。ASDでよく見られるのが「言葉の遅れ」です。
赤ちゃんは1歳になるまでは「あー」「うー」などの喃語を口にし、1歳を過ぎると「ブーブー」など意味のある言葉をしゃべるようになります。
そして、2歳を過ぎると「パンちょうだい」「ママ、おもちゃとって」など、2〜3語の文章を話せるようになります。
3歳頃を過ぎても言葉が出ない場合などは、発達障害を疑うことに。ただ、言語の遅れがASDなどの発達障害によるものなのか、知的障害によるものなのか、この時点では判別が難しいところ。
ASDで知的能力が高いケースにおいては、3歳までしゃべらない場合でも、その後にぐっと伸びて言葉の遅れを取り戻していく人が大半です。またASD独特の声の調子、単調な話し方、奇妙な言葉のリズムなど少し違った言葉の使い方をすることもあります
一方、ADHD(注意欠如多動性障害)の特性のある子どもの典型的な特徴は、「いつも動き回っている」です。座っていることが苦手だったり、部屋の中を走り回ることが好きだったりします。
夜も全然寝ようとせず、「寝かせようとしても必死に抵抗して、疲れ果ててやっと寝る」という親も。
このように活動性が高く、エネルギーにあふれている状態が長時間続くのが、ADHDの子どもの傾向といえます。
そのほか、発達障害においては「子ども同士の関わりが薄い」「いつも1人で遊んでいる」「集団の輪に入れない」「他の人と一緒の行動がとれない」といった行動も。
これらは他者と関わろうとしないASD的とも、興味のあることに熱中するADHD的な行動とも見ることができます。