性認識のない、谷琢磨というカテゴリーになりたい
——まだ男の娘ブームが来ていない時代に女装をするのは勇気がいりませんでしたか?
谷:そうですね。あのときの勇気は何だったんでしょうね。女性物の服を買いに行くのも、当時は男性だと試着を断られるお店もあったようです。僕はマスクで顔を隠したり、当時のマネージャーさんに付いていってもらったりしていましたね。
——女装を始めてから、楽曲に影響はありましたか?
谷:ありました。とても分かりやすい話だと、歌詞の中の一人称が「ぼく」から「私」に変わったことです。歌が物語になっているのですが、男と女が入れ変わっているような表現があって、より夢の中のような感じとなり、メルヘン要素が多めの作品になっていますね。
——失礼ですが、トイレや更衣室はどうされているのですか?
谷:その質問、よくされるのですが、トイレは男性用を使っています。でも、女性だと思われてしまうと、他の男性に不快感を与えてしまうかもしれないので、「男です」と書いてある大きなバッチを胸に付けて入っています。
更衣室に関しては、温泉の施設の方が僕のために気を遣ってくれて、男性用と女性用と、それ以外の人が入る時間帯を作ってくれているんです。今、施設さんも性同一性障害の方への対策をしっかりしてらっしゃいますね。社会がストレスフリーな時代に動いてきているように感じます。
僕は性同一性障害ではないのですが、女性ホルモンが多めの体質で、元々少し胸が膨らんでいたり、女性がかかることの多い病気にかかったりしたこともあります。だから、なるべくして男の娘になったのかもしれませんね。
——谷さんが目指す男の娘像はありますか?
谷:難しいですね。本当に理想なのですが、性認識のない、谷琢磨というカテゴリーになりたいです。例えるならふなっしーみたいな。男とか女とか、枠組みにとらわれない存在になりたいという目標はあります。性を意識するから難しいこともあるので。お客様とハグをしたら、僕が男だからヤキモチを焼いちゃう方が出てきてしまいます。でも、ふなっしーみたいな存在ならそういうことはないですよね。
——実験台モルモットとして、今後の目標や挑戦してみたいことはありますか?
谷:今までずっと、やりたいことをひっちゃかめっちゃかになりながら詰め込んできたバンドなのですが、まだ行き止まりが見えないんです。やり尽くしてしまったことはないので、周りがどう思おうが、こういう決まりがあるよね、みたいなのは取っ払ってしまって、表現を重視したバンドでありたいです。
例えば、今回やったCDを買うとおまけがついてくるシリーズ。そういうのは大手の方は流通できないと思うのですが、これは表現なのだからうちはこれでやろうと。他ができないことをやっていければなと思っています。
——では、最後にファンの皆様にメッセージをお願いします。
谷:まさに今回の単独公演やアルバム「メランコリパルフェ」で少し心の光が見えてしまった部分があるのですが、心というのは行き止まりのないサイクルなので、晴れ晴れとした気持ちから鬱々とした気持ちになり、行き止まりはありません。
辛くて自殺してしまう方もいますけど、ずっと沈んだり浮いたりを繰り返していくものなので、それをうちの楽曲と体験しながら、ちょっと気楽に生きていってほしいなと思います。ぜひ皆さんと共有できればと思います。
リリース情報
4thアルバム
『メランコリパルフェ』 発売中
【収録曲】
1.鮮やかな灰色のパレヱド
2.病猫タナトフォビア
3.キラリグサリ私雨
4.傷と傷と傷
5.小さな虫 ~共鳴~
6.ジアスターゼの鞄
7.心算
8.メルクマールの表彰台
9.逆さ部屋のビスクドヲル
10.透明な虹色のパステル