そして、ちょっと間をおいて…。

「でも、やっているときは伝わってないんじゃないか? という心配の方が大きかったです。完成して、観てくれた人があのシーンのことを話してくださるので、伝わったんだ、よかったって思いました」

それにしても、彼女の“想い”をきちんと伝えるお芝居のベースにはいったい何があるのだろう? いよいよ核心に迫ってみよう。

「デビューしたての頃はモデルのお仕事の方が可愛い洋服をいっぱい着られたから楽しくて、お芝居にはあまり興味がなかったんです。

でも、お芝居はこういう人がいるんだよっていうことを伝えられるし、今回の映画の歌にしても気持ちを届けられますよね。

演技を通じていろいろなことを伝えられるところが素敵だし、演じること自体が楽しいなと思えるようになったので、いまは女優の仕事が楽しいです」

演じることが好きになったきっかけは?

「私のファンの女の子で、小学生なんですけど、手術をした子がいて。しかも、それは目にメスを入れる手術だったから、彼女は“手術が怖い!”って言っていたんです。

そりゃ、そうですよね。その辛さや恐怖はその子にしか分からないものだけど、そのとき私は『暗殺教室』を撮っていたので、“私も撮影を頑張るから、頑張ってね”というビデオメッセージを送ったんです。

そしたら彼女から“頑張る!”という返事が戻ってきて。

私たちのお仕事って、そうやってみんなを元気にしたり、夢を与えられる素敵なものじゃないですか? それで女優の仕事が好きになったんです」

彼女の芝居は、自らの心に宿った純粋な気持ちに裏打ちされた嘘のないものだから説得力があったのだ。そして、その真摯なパフォーマンスは今後多くの作品でさまざまな経験をして、さらなる進化を遂げるに違いない。

「これからもいただいた仕事は全力でやっていきたいし、ほかの人にはできない自分なりの表現やお芝居ができるようになりたいです。そのためにたくさん作品を観て、勉強をしたいなと思っていますね」

そうきっぱり言い切ってくれた山本舞香。

彼女にまだ出会っていない人は、『桜ノ雨』でまずはその歌声に涙するところから始めてみてください。

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。