東京の「西側」と「東側」について、考えたことはあるだろうか。上京してずっと西側に住んでいる人は、なかなか東側に移り住まない、とはよく聞く話で、逆も然り。どちらか一方で長期間暮らしていると、独自の空気や思想が自分の体になじみ、逆側を「遠い世界」として捉えてしまうようだ。
筆者の周りでもアラサーになって、西側から東側あるいは東側から西側へと、転居した人をなかなか見かけない。が、筆者自身は昨年11月、東京の西側から東側へと引っ越した。当時は思いきった決断をしたつもりだった。ここ4ヶ月の間に生まれた思いや発見を振り返り、ここに綴ってみたい。
世田谷区から中央区へ
飲食店を中心に店舗がたくさん立ち並ぶ賑やかな世田谷区から、オフィスビルに囲まれた中央区へと移動し、まったく異なる環境で暮らし始めた。しかし、引っ越しを決めた当初、西側から出る予定はなかった。
上京してもうすぐ12年になる。学生時代に約4年住んだ西多摩郡瑞穂町と、それから1年弱住んだ神奈川県川崎市を除き、品川区(荏原町)、目黒区(学芸大学)、世田谷区(三軒茶屋)と西側にある3区を2年ごとに移り住んだ。
それもあって、これから先も西に住むのだという思いが当然のようにあって、中央線沿線や東急線沿線などを中心に毎週末、物件探しに明け暮れた。しかし、ぴったりハマる住まいに出会う機会は皆無で、新しい世界に飛び出す時期なのかもしれない、とうっすら感じたのを覚えている。
そんな折、妹から彼女が一時期住んでいた中央区(八丁堀)近辺を勧められた。ほぼ訪れたことのない未開拓のエリアだから、検討リストには入っていない。それでも「環境をガラッと変えて再スタートしよう」という思いが勝り、近辺で物件を探すと「気に入らないところがゼロの物件」と出会い即決した。
1DK以上、収納スペースが広い、独立洗面台あり、室内洗濯機置き場、角部屋、4階以上、駅徒歩5分など、住まいに対する注文は多いほうだと思う。家賃は多少予算オーバーしていたものの、これらをすべて満たしていたし、最寄駅が3つもあるという利便性の面でも、かなり気に入っている。