『恋は雨上がりのように』(作 眉月じゅん)

男:45歳 女:17歳

おそらく現在、“最も注目度が高い歳の差ラブコメ”がこれだろう。「コミックナタリー大賞2015」第2位、「このマンガがすごい!2016」第4位(オトコ編)など各社のランキング上位に入り、今月末に大賞が発表される「マンガ大賞2016」最終選考にも残っている。

陸上競技をケガで断念した女子高生・あきらが、あるきっかけで冴えないファミレス店長の近藤に本気の恋をする。自分も同じファミレスでアルバイトとして働きはじめ、ついに近藤へ想いを伝えるが、親子ほどの年齢差もあって近藤の態度は煮え切らない……そんなもどかしい2人の関係が瑞々しい筆致で描かれている。

特徴的なのは、物語があきらと近藤の両方の視点から描写されていること。あきらは若さゆえ相手を一途に想うあまり、小さなことで悩んだり、周囲の人間とぶつかったりする。近藤は近藤で「なんで俺みたいに枯れたバツイチ男に?」と困惑しながら、あきらの影響で情熱的だった昔の自分を少しずつ思い出していく。

余裕ある年上男が女性を引っ張るというステレオタイプではなく、どちらも血が通った等身大の人間として描いているのが人気の理由と思われる。2人の仲が劇的に変化する重要シーンでは必ず雨が降っているという演出も秀逸で、実写化・アニメ化しても映えそうだ。

『娚の一生』(作 西炯子)

男:51~52歳 女:30代半ば

今年でデビュー30年を迎えた実力派作家による、“オトナ同士の恋”を描いた作品。全4巻と短くまとまったコミックスは累計150万部を超え、2015年には榮倉奈々さん、豊川悦司さんの主演で映画化された。

東京の大手企業に勤める主人公・つぐみは、長期休暇を利用して、他界したばかりの祖母の家で過ごすことにした。そこへ突然現れたのは、生前の祖母から家のカギを預かっていたという関西弁の男・海江田。強引に同居を決めて、しかも露骨に言い寄ってくる海江田につぐみはとまどいつつ、徐々に惹かれはじめていく。

見どころを絞り込むなら、海江田醇というキャラクターの個性に尽きるだろう。細身のクールな優男で、大学教授にして数多くの講演活動をこなし、賞を授かるほどのコラムニスト。

完璧超人のようだが子供っぽい部分も多く、つぐみの祖母に片思いしていた時期もあったという。つぐみも30代半ばといえば十分にオトナの女性だが、破天荒な海江田の言動に振り回されっぱなしとなる。

容姿も能力も社会的地位も超ハイスペックながら、互いに家族や恋愛のことで“歪み”を抱えた2人。そんな恋の行方がどこに落ち着くのか、最後まで飽きさせない作品になっている。