ドラマの影響力に困惑
お医者さまだからこそ指摘できること、それは手術や処置のおかしな場面ですよね。
ドラマを見ていて「あり得ないな」と突っ込みたくなった医療行為は? と問いかけてみました。
挙がってきたのは、『Ns'あおい』のある場面でした。
- 大腸ポリープ内視鏡切除後の夜間の急変のシーン。実際の急変の状態と全然違って、数分で心肺停止になるくらいの急変のシーンがあった。内視鏡切除後急に心肺停止になるなんて、内視鏡処置の直接的影響ではない。あのドラマの後、内視鏡手術がやりにくくて困った。
これについて、お医者さんは「人気ドラマの影響力をもっと真剣に加味して、ドラマ作りをしてほしい」とおっしゃっています。
フィクションですので、ドラマの手術シーンを真に受けないことも必要ですね。とは言え、娯楽一辺倒というわけではなく、人の命にかかわる題材を扱った作品が多くの目に触れることになります。医療ドラマを制作する方々にも、真摯な態度が求められると言えそうです。
奇跡というよりは「小さな感動」
最後に。医療ドラマは奇跡と感動の連続でできていますが、医療の現場において、奇跡は起き得るのでしょうか!?
この質問に対し、頂いたご意見は真っ二つに分かれました。
先に、否定的なご意見からご紹介しましょう。
- あまり期待できないと思います。医療の現場に限らず、奇跡が起こることは、基本的にないのではないでしょうか。
- 医療は科学です、科学に奇跡など起きえません。
- 多くの人が奇跡を信じながら亡くなっていくのを見てきた。
- そんなにうまくはいかない。ドラマを見て、なんでも助かるのではと期待されると困る。
また、奇跡的な体験をしたというドクターでさえ、起きたことは受け入れるとしながらも
- 専門家として冷静にいたいので、奇跡の”期待”はしたくありません。
と言います。奇跡という概念に対して、距離をはかっている印象ですね。科学的な根拠に基づいて冷静に医療行為を行っている以上、情緒に流されるわけにはいかないご職業なのだろうな……と思います。
しかしながら、「奇跡はある」というお答えも、予想以上に多く聞かれました。
- 一度止まったモニターが、息子さんが来られてから動いたことがありました。今までで一度だけですが、あの瞬間は今でも記憶に残っています。
- 不思議なこと、程度は起こるが奇跡までは滅多にない。でも長くやっているとごくたまに遭遇する。命(生き死に)を決めるのは、ある部分では気持ちかもしれない。
- 人の生命力は現在解明されている科学だけでは説明できない気がする。
- 奇跡というよりは感動はたくさんありますね。小さい赤ちゃんの心臓手術は奇跡のようには感じます☆ 奇跡というよりは、その患者様本人の生きる力だと思います。医者はその力を少し支えさせて頂いているに過ぎません。
奇跡という言葉を使うと大袈裟になってしまいますが、生命の不思議を感じる機会はやはりあるようです。感情的に受け止めすぎてはいけないのでしょう……。でも、やっぱり嬉しくなりますね。
先生方、ご協力いただきありがとうございました!
あり得なくても見たいぞ!!
多くのリアルドクターの声を立て続けにご紹介してきましたが、いかがでしたか?
私、現場と違う場面が多い医療ドラマがつまらないと言うつもりは、一切ありません。それどころか、次はどんなにあり得ない医療ドラマが生まれてくるのだろうと、期待がつのります。
ただ、ドラマはあくまでもドラマ、エンタメとして受け取りたいものです。
皆様、医療ドラマにのめりこみすぎてお医者さまに過度な要求をしないよう、くれぐれもご注意くださいね。