俳優デビューから20周年を迎えた小泉孝太郎が、『点と線』『砂の器』など数々のベストセラー作品を世に送り出した作家・松本清張の、社会派推理小説の起点になった記念碑的作品と呼ばれる傑作ミステリーを連続ドラマ化した『連続ドラマW 松本清張 眼の壁』で主演を務める。
演じるのは手形詐欺の真相を、強い正義感のもとに追いかける男・萩崎竜雄。真相に向かって進むも、その実直さゆえにどんどん追い込まれていく萩崎役を、さまざまなものを背負った登場人物たちに囲まれながら、「普通でいようと。色んなものをそぎ落として、色をなくすことを心がけた」と話す小泉。
タイトル『眼の壁』に感じたことや、萩崎の親友・村木を演じた、実生活でも親友の上地雄輔との撮影エピソードとともに、これまでの俳優としての20年の積み重ねについて語った。
自分が萩崎の立場でも同じ行動をしていそう
――事件に巻き込まれていくサラリーマンの萩崎を演じましたが、役柄についての印象は?
信頼できる男だと思いました。人を決して裏切らないし、頼られたらそれに応えようとする。もし自分の目の前にいたら、心を開いて話せるなと。愛着が沸いたし、すごく身近に感じました。実直で真面目で正義感の強い男。なおかつ、上地雄輔の演じた親友で新聞記者の村木の言葉からもわかるように、普段は外に出さないけれど、心の中にものすごくメラメラと燃える情熱を持っている。
だからこそ、本当だったらひとりではできないようなことにも、突き動かされて向かっていくんだろうなと。ものすごいドライな男だったら、自分で動かず、最初に警察に通報すれば終わっちゃう話ですからね。1話も持ちませんよ(笑)。
――愛着が沸いたとのことですが、小泉さんが萩崎のような立場に立たされたら、どう立ち回りそうですか?
同じことをやっていそうです。“リアル上地雄輔”に頼みながら(笑)。最初に手形詐欺に遭ってしまう恩人・関野部長(甲本雅裕)への思いに加えて、絵津子(泉里香)という謎めいた女性と出会って、一目惚れまでしてしまいますし。
そして絵津子に「警察には行かない」と約束してしまって、さらにややこしくなっていく。絵津子も何かを抱えていそうだし、警察に行ってしまったら彼女との関係性も崩れてしまうかもしれない。翻弄されてしまう萩崎の気持ちはよく分かります。
――松本清張作品のなかでも、傑作ミステリーと言われる小説が原作です。
僕は松本清張作品であることは意識せず、萩崎をごくごく普通の一般的なサラリーマンとして演じました。周囲の登場人物たちが、さまざまなことを抱えていますし、謎めいた人がたくさん出てきますから。僕は普通でいようと。色んなものをそぎ落として、色をなくすことを心がけました。視聴者の方が、萩崎目線にすっと入れるように。とにかく描き方が絶妙なんです。
今回、僕はごく普通の人物を演じたわけですが、それがここまでの社会派ミステリーになっていく。結果として松本清張作品だったねとなるようにと思っていました。どんどん追い詰められて、苦しい部分が多かったですけど、演じ甲斐がありました。