マイナスだと思っていた部分が、いつの間にかひとつの武器になっていった

撮影/藤田亜弓

――小泉さんは役者デビューから20周年ですね。ご自身の強み、武器はなんだと感じていますか?

強みと言われると分かりませんが、最近嬉しかったのは、昔から知っているベテランの監督さんに「小泉くんは制服が似合うね」と言われたことです。「スーツや制服が似合う、警察、医者顔だ」と。その言葉は、20代の頃だったらあまり嬉しくなかったと思うんです。誉め言葉には受け取れなかった。でも今はすごく嬉しくて。

――昔なら誉め言葉に受け取れなかったというのは。

「爽やかですね」とか「好青年ですね」と言われたりするのが、決してプラスには思えない頃があったんです。どうしても反発してしまった。どうしたって僕が“個性派俳優”と呼ばれることはないですよね(笑)。でもそこに憧れていたときもあったんです。ないものねだりというのかな。僕自身は爽やかさとか、好青年ぽさは求めていなかった。

でも今、「制服が似合うね」「ネクタイが似合うね」「正統派だね」と言われることが、自分への誉め言葉になった。この20年で。それでオファーをいただけるわけだし。僕が“個性派俳優”と呼ばれる枠にいたら、『眼の壁』の主演はたぶん来ていないでしょうし。だからそこが、僕の武器になったのかなと。

撮影/藤田亜弓

――20年かけて武器になっていった。

最初はいらないと思っていたものが、むしろマイナスだと思っていた部分が、いつの間にかひとつの武器になっていったのかな。いろんな作品や人と出会って、続けてきたからこそ分かるありがたみですね。20代の頃は本当に苦しかったけれど、毎日1歩1歩の積み重ねが、この20年という月日を作って、今の僕があるのを感じます。

――最後に、『眼の壁』というタイトルを小泉さんはどう感じますか?

すごく難しいですね。ドラマの最後に松本清張さんの言葉が出てくるのですが、結局人間は眼に見えている、表層的な部分だけで判断しているのだと感じさせられます。人に対しても第一印象で判断することが圧倒的に多い。

僕は雄輔と親友ですけど、ひょっとしたらそこにだって眼の壁があるかもしれない。10年連れ沿った夫婦でもそうかもしれない。遮蔽しているもの(壁)がなくなるときってあるのかなと。眼の壁の奥にあるものを見抜く力、本質を見抜く、“慧眼”を問うているのかなと感じます。

そしてさらに、真実には、常に眼の壁がつきまとうのかもしれないとも感じました。「その壁を超える勇気がありますか?」と問われているドラマのような気がしますね。

ヘアメイク/石川武 スタイリング/北村彩子
衣装協力/Paul Smith(ポールスミス)

作品紹介

『連続ドラマW 松本清張 眼の壁』
6月19日(日)午後10:00より放送・配信スタート(全5話)
【放送】毎週日曜 午後10:00[第一話無料放送]WOWOWプライム/ WOWOW 4K
【配信】各月の初回放送終了後、同月放送分を一挙配信:無料トライアル実施中/WOWOWオンデマンド