撮影/須田卓馬

パーフェクト、という言葉が今いちばん似合う人かもしれない。

それは決して見た目に限ったことではなくて。その柔らかい物腰。品のいい微笑み。どんな質問にも、誰も傷つけず、謙虚に、それでいてユーモアのある回答を選ぶ知性と感性。

町田啓太はいつも健やかで、まるでネガティブな要素が見当たらない。

だけど、インタビューで「犠牲」に関する話に話題が及んだとき、町田啓太はさらりと「自分はネガティブになりがちだとわかっている」と明かした。そして、だからこそ「ポジティブに考えるようにしている」と。その言葉を聞いたとき、人として良くありたいという努力が、町田啓太の人間性を磨いているのだと思った。

水谷豊監督作品『太陽とボレロ』でトランペット奏者・田ノ浦圭介を演じた町田啓太。水谷豊との思い出から、一生かけて愛するものまで。その誠実な人柄を凝縮した5000字インタビューをお届けする。

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水谷さんが圭介のチャーミングな部分を引き出してくれた

撮影/須田卓馬

――本作に登場する「弥生交響楽団」の面々は、いわゆるアマチュア。本業がありながら大好きな音楽を続ける彼/彼女らの姿は、町田さんにはどう映りましたか。

それだけ情熱を注げるものがあるのは素敵だなと思いました。僕自身、仕事以外に何かあるかなと考えても、なかなか思いつかない。それだけ熱意を持って打ち込めるものがあるのはすごいことですよね。

――その中で町田さんが演じた圭介はこれからの身の振り方に思い悩んでいる役どころです。

圭介は音楽を愛しているからこそ、自分の現状に対し鬱憤やフラストレーションがたまっていて、その行き場のない気持ちを「弥生交響楽団」という環境に向けているキャラクター。その内面を丁寧に演じられたらと、最初は考えていました。

――最初は、ということは現場に入って何か変化があったのでしょうか。

水谷さんから圭介のコミカルでチャーミングな部分をたくさん引き出していただいたおかげで、僕が思っていた以上に圭介像が膨らんだ感じはありましたね。

撮影/須田卓馬

――それはたとえばどんなところが?

物語の途中で理子(檀れい)さんと鶴間(石丸幹二)さんのあとをこっそりついていくシーンがあるんですけど、あそこもそうですね。

――あのシーンの町田さんの手の動きが絶妙に愛らしかったです。

そこがまさに水谷さんの演出といいますか。こういう感じでとご自分でやってくださるんですよ。それが抜群に面白いから、やる方としてはどうしようとなるんですけど、それをどうにかして咀嚼してやるというのが挑戦でもあり、すごく楽しかったんですよね。そういうことが本当にたくさんあります、今回の作品は。

――そこはきっと町田さんのコメディセンスを買われてのところもあるんじゃないでしょうか。

いやいやいや(笑)。そこはどうだったのかわからないですけど。水谷さんは演出をつけてくださるとき、いつも含み笑いをしながら来てくれるんですね。それが僕は楽しみで。

水谷さんが含み笑いしながらいらっしゃるとつい僕も笑ってしまうので、まだ何も演出が始まってないのに2人で笑っているということがよくありました(笑)。そういう特別な時間を過ごさせてもらったという思い出が強いですね。

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