6月24日より公開中のムロツヨシ主演の映画『神は見返りを求める』。
“神”のような心を持った田母神尚樹(ムロツヨシ)と底辺YouTuberのゆりちゃんこと川合優里(岸井ゆきの)との心温まるラブストーリー――と思いきや、人間が誰しも持つちょっとした欲が、ちょっとした出来事をきっかけに、自分一人では抱えきれないほど大きなものとなっていき、いつの間にか抜けられない闇へと引き込まれていく。
本作で若葉竜也が演じるのは、田母神の会社の同僚で、ゆりちゃんとも顔見知りの梅川葉。調子のいいところがあり、誰にでも良いことを言うだけの男だが、田母神とゆりちゃんが闇へと向かうきっかけを無責任に作っていく。
この梅川という何とも形容しがたい男を演じる上で、若葉は何を考えていたのか。コミカルでありながら、現代の闇にも迫る本作をどう受け止めたのか。10年以上の付き合いになるというムロツヨシとのエピソードなども含め、語ってもらった。
本人に悪意がないのが怖いと感じるところ
――演じた梅川というキャラクターをどのように捉えていましたか。
何かを決めてかかったわけではなくて、梅川の中に悪意というものがない方が怖いな、と思ったので、悪意は排除していました。ピュアにやろう、と。
――ピュアとは、あのような言動を考えてしているわけではなく、思い付いたままに行っているということでしょうか。
僕はそうだと思っていました。本当にヤバイ人って相手の目を見て平然と「カネを貸してくれ。絶対に返すから」とかって約束できる人だと思っていて。本人に悪意がないのが怖いと感じるところかと。僕自身、そういう人は苦手ですけどね(苦笑)。
これは嫌な奴っぽいセリフだからそう見えるように言おう、ではなくて、本心で、純粋にその言葉を発することを気を付けていました。
――若葉さんにインタビューをさせていただくことが決まった上で映画を観たので、梅川に注目していたのですが、そうすると少し同情心も芽生えてくるというか。
それは特殊ですね(笑)。
――もしかしたら友だちがいなくて寂しいとか、何かあって本心が見せられないとか、それであんな言動をしているのかな、とか。
それが彼の切なさみたいな? たぶんそれ、梅川に取り込まれて振り回されるタイプの人だと思います。近づかない方がいいですよ(笑)。
――(笑)。共感できないキャラクターだとは思うのですが、若葉さんは梅川がどうしてあのようになってしまったのか、とかは考えましたか。
僕は必要以上に役のバックボーンを考えることはしないんです。それがいい方に作用することってあんまりない気がしていて。考えてしまって現場で固まってしまうよりも、縦横無尽に動ける方がいいと思っているタイプなので。
彼を理解しようとする気持ちは大事ですけど、どちらかと言うと彼自身になろうというより、彼がそばにいたらどういう気持ちになるか、ということを考えます。
彼の言動を一番近くに居て見ているような。彼の話を聞いたら自分がどんな気持ちになるのかと考えることが、彼への理解を深める効果的な方法な気がします。
――では今回、梅川のそばにいてどんな気持ちになりましたか。
僕はもう大嫌いですね(笑)。ただ役に対して共感したことって今までの作品でもほとんどなくて。梅川に限らず、その役を100%理解したか、と言われたら、理解もしてないです。
逆に100%理解した、という人がいるならば、それは思い込みだと思うので、危険だな、とも思っていて。他人を100%理解することは不可能だと思っています。