カメラのレンズが刃物とか、凶器に見えるのが、この映画の今っぽさ
――本作にはコミカルな場面もありますが、面白いと思ったシーンはありますか。
(田母神と優里が)すごく不毛なカメラの向け合いをするところ。ちょっと時代劇の殺陣のようにも見えて面白かったですね。そういうところも吉田さんの持つ面白さなんですよね。
――あのシーンは笑えますよね。だた自分が当事者だったと考えると怖くもあり。
そうですよね。カメラってある種、気味の悪いものですよね。カメラのレンズが刃物とか、凶器に見えるのが、この映画の今っぽさでもあるなと、僕は思っていて。
それが人を殺してしまうようなところまで行ってしまうこと。その感情に自分もなっていると気づいたときに、自分自身も現代に取り込まれているんだな、と感じました。
――仕事柄、カメラを向けられることは多いと思うのですが、怖いと感じることもありますか。
ありますね。何かイベントとかで表に出たときに、「今日は撮影OKです」とか言って、客席から信じられない量のカメラで撮られたりするときは恐怖を感じることもあります。
そこはこの仕事をしていく上でのプラスと捉える方もいると思いますけど、僕はそんなタイプでもないし、人気者になりたいとも思ってない人間で、そもそも人前に立つのも得意な方ではないので、嬉しいという感覚は全くないです。
――役者の仕事をしていたら、知らない人が自分のことを知っている、というのはあることだとは思うのですが、そういう場面ってそれを象徴化したような場でもありますよね。
動物園の動物とあまり変わらないのかなと思うときはあります(笑)。僕らが像を見て「大きいな」と思って写真を撮るのと同じような感覚なのかな、と。普通に街を歩いていて、隠れて写真を撮られたりすると、「人間と思われていないんだろうな」と感じるときはあります。
――本作はYouTuberが主人公ですが、YouTuberに対してはどんなイメージがありますか。
僕もよく観ていますし、大好きですよ。文化として認められていてすごいなと思います。
――自分でやってみたいとは?
それは思わないです(笑)。向いてないです。たぶんやってみたところでできないと思います。選ばれた人たちができることだと思うし、やっている人数としては俳優より多いし、成功するのは難しいと思います。
――若葉さんは映画などの演出もしてますが、それとはまた違うと?
バラエティ的なものに特化している人であれば、そういう能力もあるかもしれないですけど、僕はそこに対してはないので。僕自身は今やっている方向で掘り下げていく方が楽しいと思っています。
――最後に少し作品と離れたこともお聞きしたいのですが、6月10日で33歳のお誕生日を迎えられますが(取材時は誕生日前)、歳を重ねていくことにどんな想いがありますか。
僕は10代、20代のころから早く歳を取りたいと思っていたので、歳を重ねることはすごく素敵なことだと思います。若いということを、僕はあまり魅力的には思っていないので。
男女関係なく、しっかりと皺があって、白髪があって、年輪みたいなものが表に出ている人を魅力的に感じます。
――そう考えると、ご自身が歳を重ねることに重みを感じることはないですか。
そうですよね。僕はあまり自分に期待をしているタイプではないですけど(笑)、諦めたうえで、何がやりたいか、ではなくて、何ができるかは考えられると思っているし。そうやって考えてちゃんと歳を重ねていきたいな、とは思っています。
――では敢えて聞きますが、33歳の抱負は?
ホントに特にないんですよね(笑)。毎年、毎年、よりシンプルになっていけたらいいな、とは思いますけど。
僕は悩みが多いと、逆に安心することにもなると思っていて。悩んでいることが、何かについて考えているって勘違いをさせる。だから自分を安心させるための悩みは必要ないと思っていいます。
本当に悩むべきところで悩むべきだと思うから、常に悩みは一個ぐらいでいいかな、と。それは仕事でも、プライベートでも。そんな感じに過ごせたらいいな、と思います。
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「“見返りを求める男”と“恩を仇で返す女”の心温まりづらいラブストーリー」というキャッチコピーが付いている本作ですが、若葉さんも「変な映画だなと思いました(笑)」と言うように、最初はほっこりした気持ちで観ていたのに、中盤から「おやおや?」となり、最終的には……という一言で形容できない作品です。
それだけに、観る人によってどこで何を感じるかも違ってくる作品だとも思います。ぜひ劇場で、自分なりの感性をもって楽しんでいただければと思います。
作品紹介
映画『神は見返りを求める』
2022年6月24日(金)全国ロードショー