27歳。それは、なんだかとても微妙な年齢だ。無邪気に夢を見ていられるほど幼くはなくて、だけどすべてをあきらめきれるほど大人でもない。現実と、理想。自分と、周りの人たち。いろんなものと比べながら、あがいて、もがいて、未来を探し続ける。
そんな揺れる27歳の心を描いた群像劇がHuluオリジナル『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(Hulu独占配信中・全8話)だ。高校2年の夏、教壇で女教師は生徒たちに告げた、「みなさんもこれから10年経ったら、必ず27歳になります。そのときに後悔することが、私なんかより一つでも少ないことを私は本気で願っています」と。
それから10年。27歳になった元生徒たちは、人生の岐路に立たされていた。思い出すのは、夢は必ず叶うと信じていた17歳の頃に聴いたあの歌。もどかしくて、ほろ苦くて、とびっきりエモーショナルな青春の終わりの物語が、今、始まる。
そこで、役者の夢をあきらめ、平凡なサラリーマンとしてうだつの上がらない日々を送る荻野智史役の成田凌と、アイドルの夢に破れ、故郷へ帰る前田ゆか役の伊藤沙莉に、17歳と27歳の日々について語ってもらった。
27歳って、もっと大人だと思っていました
――お2人は17歳だった頃、27歳ってどんなイメージを持っていましたか。
成田 何も想像していなかったですね。10代の頃はまず20歳というのを目指して生きていたから、27歳とか想像もしていなくて。電車でよく見る、仕事帰りのサラリーマンの方々、飲み会帰りの大人、そんな雑なイメージしかないくらい何の印象もなかったです。
伊藤 確かに27歳の印象はあんまりないですよね。ただ、もっと大人だと思っていました。自分が27歳になってみて思うことですけど、あまりにも自分が変わらなさすぎて。いつになったら、思い描いていたカッコいい大人になれるんだろうって思う。
成田 もう17歳の頃はこの仕事をしてたわけでしょ? そうすると、同世代と比べても圧倒的に大人と会う数が多かったんじゃないかな?
伊藤 そうですね、確かに。
成田 当時から27歳って大人に見えてた?
伊藤 めちゃくちゃ見えていましたね。スタッフさんとかすごい大人で、頼りになって。その印象が強いから、余計にこんなにも感覚がもろもろ変わらないんだなってビックリです。もう恐怖すら覚える、自分の成長の遅さに(笑)。
――劇中では登場人物それぞれがもがく姿が印象に残りました。お2人も、なりたい大人になれなくてもがいた時期はありましたか。
成田 ありました。というか、今もモヤモヤ中だと思います。僕が世話になっている先輩って、ひとつひとつの出会いを大切にしている人たちが多くて。そういう懐が深くて、愛情深い大人と接すると、まだそこまでできてないなって思います。自分に余裕がないのか、まだ人を愛しきれていないのかわからないですけど、20代後半にしてまだまだ自分は足りていないなって思えるようになりましたね。
――ちなみに、今おっしゃった先輩というのは、たとえばどなたでしょう。
成田 井浦新さんですね。人に対しても、物に対しても、事柄に対しても、すごく丁寧に生きられている。井浦さんを見ていると、自分もこんなふうになりたいなって思います。年齢を重ねて人を尊敬できるようになったし、同時に尊敬する人たちみたいには生きられないという感覚も最近はすごくあるかな。
伊藤 私の場合、すごく大人になりたいかって言ったら、「別に…」ではあるんですね、正直。だからと言って子どもっぽいままでもいられないなと思いながら、ずっと中間にいる感じです。大人って難しいですよね。
ある日成人したら、法的にはいきなり大人ってなるわけじゃないですか。でもじゃあそこから大人と自分で決めるのも難しいし。想像していた大人にはなれていないけど、別に目指す像も今そんなにないなって。
――伊藤さんがご自身のことを子どもっぽいと思うのはどんなところですか。
伊藤 そんなに余裕がないところですね。何か起きたら、すぐメンタルが乱されるし、感情が優先になる。そこをもっと冷静に考えられたらいいんですけど。ただ、私は出会いに恵まれていて。周りの大人からいいところを吸収して、徐々に感情ではなく冷静に話せるように努めています。