変な映画だなと思いました(笑)
――梅川のビジュアルがチャラ過ぎず、ちゃんとし過ぎず、絶妙にキャラクターを表しているな、と感じました。
何となくぼんやりと僕の中にあったものと、スタイリストの方と、監督とのイメージがそんなにズレていなくて。だから衣装合わせも早かったです。みんなが「そうだよね、落としどころはそこだよね」みたいな感じでした。
キャラクターとして嫌な奴になり過ぎてもいけないというか。ああいう奴がすぐそばにいる可能性があるというリアリティとか想像力を、映画を観てくださる人たちに持たせたかったので。普通にいそうって。
――そこがまた梅川の怖いところだと感じました。映画として客観的に見ると「嫌い」と言えるのですが、隣にいたら気づかないような気がするんです。
その気味悪さみたいなものは台本を読んだ時点でありました。だからそういうところに行けたらいいな、とは思っていました。
――本作は吉田恵輔監督が脚本も書いていますが、事前に監督とはどんな話をしましたか。
実は今回、吉田さんと話したことっていうのはほとんどなくて。オリジナル台本の良さってそこにあるというか、目に見えるような目標地点がないので、監督の中の想像を超えられるか、というところだと思うんです。だから事前に打ち合わせをして「梅川はこういうやつだよね」と決めることはなかったです。
――最初に脚本を読んだときはどんな想いがありましたか。
『空白』(2021年公開)を撮った吉田さんが、次にここに行くのか、という面白さを感じました。『空白』を撮っていたときの自分自身を裏切ろうとしているというか、飽きているというか、そんな吉田さんの怖さ(笑)。敢えてブレていくのが面白いな、と。
――この映画に出てくる人たちは誰一人好きにはなれないのですが、みんなが単純に嫌な人なわけではなく、その人の嫌な一面を映画として切り取っているだけで。だからこそ「嫌い」という一言で避けていいものではない気がしました。
自分にもちょっと思い当たる節がある人がいるんですよね。なので「見たくない」と思ってしまうのも、そういう感情を刺激されるからなのかな、と思うことはありましたね。
――完成した映画を見たとき、どんな感情を覚えましたか。
変な映画だなと思いました(笑)。でも吉田さんのすごいところはそれをエンターテインメントとして昇華させているところ。ニッチになり過ぎない。
どれだけ重いテーマを扱ったとしてもちゃんと娯楽作品としてお客さんが楽しめるように作っている。それはブレていないところなんだと思います。