撮影:映美/ヘアメイク:工藤有莉

1997年に連載がスタートし、20余年経った今なお愛され続けている、峰倉かずや氏による大人気コミック『最遊記』(一迅社刊)シリーズ。

その後、メディアミックス展開のひとつとして、2008年に舞台『最遊記歌劇伝-Go to the West-』が上演され、長きに渡りシリーズ作品としてファンを魅了してきました。

そして今年6月、前作から約4年ぶりに待望の新作が決定! ファンが待ち続けた舞台が、間もなく幕を開けます。

初演から主演の玄奘三蔵を演じてきたのは鈴木拡樹さん、そして同じく初演から孫 悟空を演じてきたのが、椎名鯛造さん。

椎名さんの持ち味でもある“アクロバット”を取り入れた動きの多い作品ですが、「今のほうが動ける。それにずっと絶頂期で右肩上がり」、だとか。

そんな彼がロングインタビューで『最遊記歌劇伝』への想い、そして初演から共に走ってきた鈴木拡樹さん、唐橋 充さんへの想いも話してくれました。

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『最遊記歌劇伝』のプレッシャー

──『最遊記歌劇伝』が約4年ぶりに始動します。第一報を聞いた時、まず何を思いましたか?

椎名 何を思ったかな……「嬉しい」という気持ちは間違いなくありました。

だけど、公演を待ってくれているファンの方々の想いだったり、鈴木拡樹の想いだったり……そういうのを昔よりもちゃんと感じるようになったので、ただ単に「嬉しい」だけじゃなくて、続けてきたからこそのプレッシャーもありました。

今までの公演を経て、ファンのみなさんからの「悟空だったらこれぐらいはできるはずだよね?」という想いを分かった上で舞台に立つので、それを越えなくちゃいけないというか。

そういったプレッシャーは感じましたけど、でもまずは喜びが一番大きいですね。

 

──“鈴木拡樹の想い”というのは具体的にどんな想いですか?

椎名 初めて出会った当時は、二人とも、舞台役者としてもほぼデビューしたての時期なんです。

そこから各々がやってきた約10年間があって、ものすごい本数の主演作品をやってきたなか、彼は彼の道を確立しながら、ずっと『最遊記歌劇伝』を大切にしてくれているのは伝わっているし、この作品に対する想いが強いことも知っています。

拡樹とは他の作品でも共演していますけど、会うたびに『最遊記歌劇伝』の話はしてました。

──続編が決まってから何かお話されたのでしょうか。

椎名 たぶんしています……たしか、さいねいさんが戻って来てくれることへの驚きと感謝で、わちゃわちゃしていたような(笑)。

「戻って来てくれるんだ!」「すごく嬉しくない?」って。さいねいさんに会うのは、2作目以降久しぶりだと思います。初演の頃、さいねいさんは、何もできなかった僕らを支えてくれたので、「今回は俺ら頑張ろうね」って会話をした気がします。

 

──さいねいさんはどんな方ですか?

椎名 初演と2作目の時、三蔵一行のなかで僕が一番年下で、さいねいさんが一番年上でした。

鈴木拡樹と丸山敦史とは、ほぼ同じ年の感覚で接することができたんですけど、さいねいさんは纏っているオーラも、芸歴でも圧倒的に“先輩”って感じで。

僕はとにかく三蔵一行の3人と早く仲良くなりたいから、一番年下だったけど「三蔵一行で敬語なんかやめようぜ。タメ口にしよう」ってルールを勝手に作って(笑)。

だけど、さいねいさんだけは例外になりましたね……恐れ多くて、龍二と呼べなかった(笑)。結局「さいねいさん」としか呼んだことがないです(笑)。

 

──さいねいさんは別格だったのですね。鈴木さんのほうがひとつ年上なのに、椎名さんが「拡樹」と呼んでいる理由も分かって良かったです(笑)。

椎名 拡樹と敦史はその時から呼び捨てです(笑)。

初演の稽古序盤……34日目ぐらいの時に、更衣室でその話をした気がします。タメ口にしたほうがすぐに仲良くなれるかなって思ったし、この二人だったらタメ口でも許してもらえるだろうって(笑)。

だけど、さいねいさんにはできなかったので、今回隙あれば「龍二!」って呼ぼうかな、と。……でもやっぱり「さいねいさん」になりそう(笑)。 

──密かなミッションですね(笑)。恐らく椎名さんが出演されてきた舞台作品の中で最長シリーズとなるかと思いますが、思い入れも他の作品と比べて大きいのではないでしょうか。

椎名 『最遊記』という作品に対する思いももちろんありますけど、今はそれぞれのキャストへの思いも大きくなっているので、原作への思い入れと同じぐらいキャストへの思い入れも大きいです。だからただ嬉しいだけでなく、重たいというか……プレッシャーも感じますね。 

 

──初演の頃、今ほどプレッシャーはなかったのですか?

椎名 ないというか、なんにも考えてなかったっていうのに近いです。

最初にこのお話をいただいて、当時の事務所のマネージャーと打ち合わせしている時、「『最遊記』という作品の悟空役のオファーがありましたが、どうしますか?」と聞かれて、「“さいゆうきの悟空”っていったら主役じゃん!」って言ったら、「あ、主役じゃないんですけど……」って(笑)。

どういうこと?と聞き返したら、「最も遊ぶ記し……の『最遊記』です」と言われて。僕、『西遊記』だと思っていて、「三蔵が主役の最遊記っていうのがあるんだ……」というぐらい全然知識がなくて。

当時は仕事も多くないから来たものは全部やりますという感じで、こんなに人気の作品だとよく分からずに受けたので、作品やキャラクターのプレッシャーを感じることがなかったんです。

それに、主演を誰が演じるのか、共演者は誰かというのも全然気にしてなかった(笑)。出演が決まってから原作を読んで、銃とかタバコとか……麻雀までやってる!って衝撃を受けて、でもすごい面白い!と思いましたね。

──たしかに10年前だと、携帯でいろいろ調べられる時代でもなかったですね。

椎名 そうですよね。10年前って、今みたいに手軽にネット検索とかできない時代だから、この作品がどのぐらい人気があるのかというのも分からなくて。

当時、僕はこの作品を知らないし、調べる手段も少なかったけど、それが逆に良かったんだと思います。