撮影/小嶋文子

松居大悟監督の最新作『不死身ラヴァーズ』が5月10日(金)より公開される。

高木ユーナの同名コミックを原作に描かれるちょっと不思議なラブストーリー。主人公の長谷部りの(見上愛)は、幼い頃に出会った運命の相手“甲野じゅん”と、中学生になって再会。じゅんのことが好きなりのが「好き」と告白し、二人は両想いとなるが、その瞬間、りのの目の前からじゅんは消えてしまう。しかしそれ以降、りのは何度も別人の“甲野じゅん”と出会い、「好き」と告白。そのたびに、じゅんが消えてしまうという出来事を繰り返していく――。

本作で佐藤寛太が演じたのは、りのの「好き」の相手“甲野じゅん”。ただ“甲野じゅん”という名前のキャラクターではあるのだが、時に陸上選手の中学生、軽音楽部の高校生、車いすの青年、クリーニング屋の店主、大学生など、別人として登場するかなり複雑な役どころだ。

かねてより松居監督作品のファンで、松居に直接SNSでダイレクトメールを送るという「好き」をアピールしたことで、今回の「好き」を描く作品に出演するきっかけをつかんだという佐藤。松居への熱い想いや、そんな松居の現場で感じたこと、ヒロインを演じた見上愛の魅力などを語ってくれた。

フォトギャラリー【佐藤寛太】映画『不死身ラヴァーズ』インタビュー&場面写真をさらに見る

すごく運命的な出会いだった

撮影/小嶋文子

――出演が決まった経緯を教えてください。

最初に僕が松居さんにインスタでDMを送ったんです。それは、松居さんの前作『手』に、仲のいい友達でもある金子大地が出演していて、一緒にサウナに行ったときに「マジでめちゃめちゃ良かった」という話をしたら、大地が「寛太もいつか松居さんとご縁があるかもね」ということを言ってくれたんです。

それで、その日の帰りに「本当に松居さんと仕事がしたいからDM送ってみるわ」って言って、想いを言葉にして書いたんですけど、その日はビビって送ることができず(苦笑)。結局、二晩くらい寝かせて「何もしないよりはやって後悔したほうがいい」と思って送りました。

そのとき、既読はすぐについたんですけど、返事が来るまでには1日ぐらいかかったので、来たときはすごくうれしかったです。そこから少しやり取りをさせていただいて、松居さんに自分の出演作をいくつか観てもらって、感想をいただくみたいなことをさせてもらいました。

その出来事から数ヶ月後、この作品のクランクインが2023年の5月だったから、3月くらいに事務所に資料が届いて、オファーをいただく流れになりました。あとから考えると、僕がDMを送った時点でこの作品は既に動き出していて、甲野じゅん役も探していたはずだと思うので、すごく運命的な出会いだったと感じます。

©2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会 ©高木ユーナ/講談社

――原作は読みましたか。

脚本を読む前に読みました。ファンタジー要素もありつつ、とても真っ直ぐで、エネルギーに溢れるストーリーだなと。これを松居さんがどのように脚本に書き起こして、映像化していくのか、想像がつかなくてすごくワクワクしました。

――寛太さんが思う松居作品の魅力とは?

例えば、僕ではない別の人が甲野じゅん役を演じていたとしても、僕は「これは松居さんが撮ったんじゃないか」と気付くと思うんです。そのぐらいの色があります。

雑な言い方になりますけど、甲野じゅんと彼に恋をする長谷部りの(見上愛)の設定って、一年に10本ぐらいは作られていそうな、キラキラ映画にもできそうなものだと思うんです。

けど、それを松居さんが描くと、他の作品ではすくい取れないような人間のダメで、みっともなくて、だらしなくて、うじうじしていて、情けなくてというような感情にもちゃんと、というか無理やりにでもスポットを当ててくる。目を背けたくなるような感情を対話の中で見せてくる。僕は、そこが松居さんの色なのかな?と思っています。

今回の長谷部りのも、「私、無敵!」「恋って素敵!」みたいなキラキラとした最強の主人公キャラではなくて、悩んでいて、みっともなくて、だらしない。そういう暗い部分も持ち合わせているからこそ、彼女が笑うと胸がすごくキュンとするし、それは松居さんが描くヒロインたちに共通するもののようにも感じます。

撮影/小嶋文子

――ご自身が好きという作品と、出演したいという作品は常に一致しているのですか。

最近は一致している気がします。昔は、いわゆるビッグバジェットというか、大作と呼ばれるものとか、作品が作られる環境にも目が向いていたような気がします。この間、映画『ゴールデンカムイ』を観て、とても面白くて、それは面白いから自分も出たいなとは思ったんですけど。

今は、その作品を通して人がどう思うのかとか、どんな素敵な役者さんと共演できるのかとか、その監督さんがどんなものを撮っていて、いつも何にフィーチャーしているのかとか、そういう部分のほうが気になるようになってきました。

とはいえ、仕事なので、タイミングも大きく影響するんですけど。映画は特に監督さんのほしいと思うものに応えたいという気持ちが大きくなっています。