僕も好きな人がいたら「好きです!」って感じになる
――この作品を通して、ご自身の“恋”の考え方が変わることはありましたか。
それこそインタビューを受けている中で、「恋ってなんですか?」という話が出ることも多くて、自分でも改めて考えたり、松居さんとも話したりもして。松居さんは「何となくでは説明できないもの」と言っていたんですが、僕は……自分が役者を続けているのも、たぶん映画とか、作品に恋をしているからなんじゃないかと思うんです。
多少、嫌なことや、しんどいことがあってもやめられない。それは恋だから。恋って人だけが対象じゃなくて、職業や夢に対しても抱く想いだと思います。恋をして、その対象を追っている自分が好きだったりもしますよね。だから恋と愛は違うというのもわかります。
恋ってなかなか諦められないもので、だからこそ踏ん張れるし、パワーにもなるもののような気がします。
――長谷部りのは恋をしたら一直線な人ですよね。
すごく共感できました。僕も好きな人がいたら「好きです!」って感じになるし、当たって砕けろというか、もう当たって砕けたいんです(笑)。でも当たれる先があるほうが、ないよりはいいと思うんです。今回の松居さんに対してもまさにそういう気持ちでDMを送りましたが、「一緒に仕事をしたい」と思う監督がいることは、幸せなことですよね。
――当たって砕けたあとは、諦めは早いほうですか。
それに関しては対象が人か、それ以外かにもよりますね。例えば、僕がハリウッド映画のオーディションを受けて砕けたとしても、また機会があれば絶対に受けます。ただそれを人に対してやってしまうと、ストーカーになる可能性がありますよね(笑)。そういう面ではいい大人として距離を取っている気はします。
――観客には本作のどんなところを楽しみにしてほしいですか。
僕が見ていたものが、僕の目線からの長谷部りのなので、やっぱり皆さんにも見上さんが演じる長谷部りのを楽しみにしていただきたいです。ふわっと風が吹いて、全力で走る姿とか、恋をすることでキラキラして、でもくじけて、泥水をすすって、そこからまた立ち上がっていくところとか。
そんなりのがいるから、僕が演じた甲野じゅんがいるというか。じゅんはたぶん、りのの恋を動かす装置として機能してるに過ぎない気もするんです。彼女が台風の目であり続けることが、この映画の魅力なのかと思います。
自分が演じたところでの魅力はあんまりよくわからなくて(苦笑)。それは他の作品でもそうだったりするのですが、インタビュアーさんから「この映画のヒロインは甲野じゅんです」と言われても、自分ではそんなふうに捉えて演じてはいなかったんですよね。
だから僕からの見どころはりの。酸いも甘いも、美しいも、情けないも、惨めも、すべてをさらけ出して突き進むりの姿は美しいと思います。
――そこは松居映画のファンという目線も含まれているのでしょうか。
あるかもしれないですね。人のカッコ良くない、ダサい、人間臭いところ描いているから、その人が救われるような瞬間に心がときめくし、観ている自分の心も救われる。そういう松居映画が好きだから、この映画に対しても同じようなことを感じているのかもしれないです。