撮影:源賀津己
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『銀河鉄道の夜2020』は「生きていく中でのターニングポイントになる」

佐藤寛太にとって現在稽古中の音楽劇『銀河鉄道の夜2020』は「今年の仕事の中でも、最も楽しみにしていた作品のひとつ」だったという。

そして、その期待は、稽古が進む中である種の確信へと変わった。「この作品に出演したことが、役者としてだけでなく、この先、生きていく中でのひとつのターニングポイントになる気がしています」とまで語る。

なにがそこまで特別なのか? なにがそこまで彼の心を震わせるのか? 本作への思いを聞いた。

撮影:源賀津己

KAAT 神奈川芸術劇場の芸術監督を務める白井晃が、25年前に青山劇場で初演が行なわれ大きな反響を呼んだ作品を再生させた本作。多くの人が知る宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をオリジナリティあふれる音楽劇に仕上げており、佐藤は主人公・ジョバンニ(木村達成)の親友・カムパネルラを演じる。

佐藤にとって初の音楽劇となるが、稽古が始まってあらためて、音楽が物語を動かしていく力に「毎日、新鮮さを感じています」と語る。

「音楽きっかけのセリフだったり、音楽や弦の音で細かく演技を切り替えるタイミングがあったりして、こうやって作っていくのかという驚きがありました。言葉じゃなく、人の動きと音楽で訴えるような部分もすごく多くて、台本を読んだだけでは想像できていなかったです。

稽古で自分が出ていないシーンでも、音楽を聴いて感情があふれそうになったりしますし、オープニングのシーンは特にすごくて、稽古中に僕が知る田舎の町の景色や4~5歳の頃の記憶が浮かんできて、故郷に帰ったような気持ちになりました」

撮影:源賀津己

出演が決まって、原作の『銀河鉄道の夜』はもちろん、それ以外の宮沢賢治の著書にもいくつか目を通し、その哲学に大いに刺激を受けた。

「(賢治は)人だけでなく、虫やそれこそ電柱といったモノにまで意思、魂のようなものを感じている人ですよね。この作品に出て、特にカムパネルラという役をやらせてもらえるからこそ、魂の行き場所とか肉体を離れた魂や思考がどんなふうに残り続けるのか?みたいなこと、死生観について考えさせられた」と明かす。

撮影:源賀津己

ジョバンニと共に銀河鉄道に乗って異世界を旅するカムパネルラだが、ほぼ出ずっぱりで舞台上にいるにもかかわらず、セリフは決して多くなく、その感情は見えにくい。そこに難しさがあるが「原作を読むと、結構、小さなことにビビったり、これをしたら他人はどう思うか?と悩んだり、器の小さいところや人間くさいところがあるんです」と佐藤は語り、こう続ける。

「わりとキレイな感じに見える役だけど、そうじゃなくて生身の人間として見せられたらと思っています。彼の決断にしても、頭の良いクラスの人気者の清く正しい子がああいう行動をとったというのではなく、生身の人間が迷ったり、悩んだりしながらああいう事態に直面して、そうなったんだというふうに見せられたらいいなと思っています」