いつもずっとピリピリしていて。簡単に言うと、尖っていたと思う

撮影/小嶋文子

――長谷部りの役の見上愛さんの印象を教えてください。

素敵でした。僕より年下ですけど、作品も観ていて、共演したいと思っていた方だったので、一緒にできると決まったときはうれしかったです。それは田中役の青木柚もそうです。

実際に共演をしてみて感じたことは、僕が知っていた見上愛はちょっと前の見上愛だったということで。見上愛という人のお芝居は、ずっと変わってきていて、これからも変わり続けていくんだろうという気がしました。

一緒にお芝居をしていると、毎回、新鮮な表情で、声のトーンで、間でやってくれる。何かをなぞらない。さっき、松居さんの作品のヒロインの話でも言いましたけど、暗い部分も持っているからこそ、笑ったときにすごいエネルギーを放つ。とても人間臭いんですよね。それを感じる素敵な人だなと思いました。

©2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会 ©高木ユーナ/講談社

――共演してみて、見上さんから得たものはありましたか。

見上さんは今、23歳とかだと思うんですけど、自分が同じ年齢の頃は、自分の実力を100%出せることが場数として少なかったので、いつもずっとピリピリしていて。簡単に言うと、尖っていたと思うんです。

それは全部自分の知識不足、経験不足から来るもので、調子に乗っているとかではなくて、必死に尖っていて、尖らないとお芝居なんてできないよっていう感じでした。

でも見上さんはそんなことは一切なくて、僕がピリピリしながらやっていたことをさらっとできてしまう。「俺が尖ってたのってマジ、何だったんだろう」って。「ダサくない? 俺って」って。振り返るきっかけにもなりました(苦笑)。

年齢が3つ違えば、世代も違ってくるので、本当に感覚が違うと思います。彼女自身のアイデンティティとか、大人な部分がお芝居にも出ているんだろなと思うこともあったし、人として学ぶことも多かったです。

芸術的な感性もすごく高くて、「俺、そういうの全然知らなかった。教えてくれてありがとう」みたいなこともたくさんありました。

©2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会 ©高木ユーナ/講談社

――現場ではどんなお話をしていたのですか。

めちゃくちゃしゃべったんですけど、何を話したのかは覚えてないです(苦笑)。僕がペラペラ話すので、くだらない話をしていたんだと思います。

それこそ前田敦子さん(花森叶美役)とは、僕からすると「時代の顔」という印象の方なので、「うわっ、前田さんだ!」みたいな感じで。ちょうど金子大地とドラマ『育休刑事』(NHK)で共演されていたので「観ました!」って、またペラペラと話しかけていました(笑)。

僕、あまり緊張はしないほうなんですけど、緊張していても、いなくてもしゃべってしまうので、周りから見ているとあまりわからないんです。

撮影/小嶋文子

――「アドリブかな?」と思うような自然なやり取りが素敵だと感じるシーンも多かったです。人力車の場面とか。

ヤバイですよね(笑)。あれ、山梨の山奥まで人力車を運んで撮影したんです。

――それから大学生の甲野じゅんと長谷部りのが、ソファーを動かして失くしたスマホを探すシーンとか、家の前で二人でバドミントンをするシーンとかも。

ソファーと人力車のシーンはアドリブに近かったです。バトミントンはわりとセリフ通りだったと思うんですけど、一生懸命にバドミントンをしていたから、そんなふうに観ていただけたのかもしれないです。

アドリブのシーンは、自分では「俺はなんて下手なんだ」って思ってしまいました。試写で観たとき「わあああ、やめてくれ~、勘弁してくれ~、早送りしてくれ~」って感じでした。ダサい、一挙手一投足が(苦笑)。本当に恥ずかしかったです。セリフ以外のことを話せば話すほど、恥ずかしかったです。