猫との新しい関わり方“預かりボランティア”

今回の取材で印象に残ったのは、「預かりボランティア」の存在だ。動物愛護センターから引き取った猫を自宅で飼育し、個性を把握してブログで情報発信しながら、新しい飼い主が決まったら譲渡する。

この日、参加した中で最年少(生後11ヶ月)となる、白黒カラーのイケメン猫・ラトルくんを無事に譲渡成立させた、石戸さん夫妻も預かりボランティアだ。

以前から猫を飼いたいと考えていた石戸さん夫妻だが、まだ結婚したばかりで生活環境の変化も大きい。これから5年、10年と猫の世話をしていけるかどうか不安があった。そこでネットを使って情報を集め、「ちばわん」の預かりボランティアに志願したという。

ペット向けの物件探しがやや難航したものの、ペット可の物件入居後に預かりはじめたラトルくんが非常に飼いやすい猫だったため、飼育そのものは順調。預かってから約2ヶ月で譲渡が成立した。

「猫を飼いたい、猫の役に立ちたいという気持ちから預かりボランティアになりました。猫の個性をすべて把握して情報提供できるのは、預かりボランティアだからこその強みだと思います。一緒に過ごしたラトルと離れるのは少し辛いですけど、また次の猫を受け入れたいです」と石戸さん夫妻は話す。

特定の猫を終生飼育するのではなく、また猫カフェなどで一時だけ触れ合うのでもなく、その中間に位置する新しい“猫との関わり方”だと感じた。「ちばわん」では預かりボランティアも含めた活動メンバーを募っているので、興味がある人は同団体の公式サイトを確認していただきたい。

ボランティアの必要ない社会を目指して

「ちばわん」を例に譲渡会の様子をお伝えしてきたが、全国にはこのような団体がたくさん存在し、犬猫をはじめとした動物たちを救う活動に励んでいる。だが冒頭にも書いたように、いまだ年間約8万匹の猫が殺処分されている。猫は犬と比較して、幼齢個体(子猫)の殺処分比率が圧倒的に高いのも特徴的だ。

千葉県では「ちばわん」などの団体が精力的に活動しているが、猫の殺処分数は2,291匹(平成26年度)にのぼる。人口比率で考えれば全国平均値より低いものの、まだ相当な数と言える。

「犬猫が苦手な、嫌いな人も当然いると思いますが、すべての人間と犬猫たちが共生していける世の中を目指しています。最終的にはそれが実現して、私たちボランティアが必要のない社会になればいいな、と願っています」

「ねこ親会」世話役の女性は、そう静かな口調で語った。

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。