ライブツアーやレコーディングの際、メンバーはもちろん、楽器や機材、物販などを運搬する、バンドマンの頼れる相棒といえる機材車。そんな機材車がここ数年、ハイエースを専門とした窃盗団によって盗難されるという被害が、多くのバンドマンから相次いでいる。
ここでは、2011年に被害に遭ったNICOTINEのShunp氏、そして今年4月に被害に遭ったSissyの原氏に自身の経験を語っていただきつつ、機材車盗難という悲しい被害の連鎖に終止符を打つべく、盗難されないための心構えや防犯対策について話を聞いた。
機材が返ってきた報告を受けた時は、警察が神様に見えました(Shunp)
――まずはハイエースを盗まれた時の状況を改めて聞かせて下さい。
原 僕らは普段、元マネージャーからハイエースを借りて、機材車として使用していたのですが。その日は吉祥寺SEATAでライブを終えて、メンバーを送り終えた示村(Ba)が家の近くのコインパーキングに停めていたんです。
で、ちょっと出かけた時にパーキングを見たら、停めていた場所に車がなくて。管理会社に電話したら、「30~40分前に、車が一台バーを乗り越えて出ていってる」と言われて。監視カメラもない駐車場だったので、手がかりも掴めないまま、現在に至るという感じです。
――車と一緒に機材も盗まれてしまったんですよね?
原 はい。ただ、いつもはライブ後に竿(ギターやベース)も積んでいたりするんですけど、その日はリリースしたばかりのCDを各々が持って帰らなくてはいけなくて。家まで送ってもらって、CDと一緒に竿を持ち帰っていたので、幸いにも竿は持って行かれなくて。盗まれたのはエフェクターやアンプ、ドラムの持ち込み機材という感じですね。
――被害総額はどれくらいになるんですか?
原 車を合わせて300~400万円くらいだと思います。
Shunp なるほど。ウチの機材車が盗まれたのは2011年なんやけど、ウチは事務所兼自宅にメンバーと住んでて。機材車はいつも事務所からちょっと離れた駐車場に停めとって、俺が原付きで出かけようと思って駐車場の近くを通った時、いつも停めてある場所に車がなくて。「誰か出かけてるんかな?」とも思ったんやけど、心配になって戻ったらみんなおるから「あれ?」と大騒ぎになって。
ウチも機材を積んどってそのまま持って行かれたんやけど、2~3日経ってから、近所の無人のコインランドリーに機材が全部ぶち込まれとって。キャビネットからヘッドから全部積んだ上に、車検証が置いてあったんです。
――ご丁寧に車検証だけ戻すというのも、逆に腹立ちますね(笑)。
Shunp あの時、当時の事務所の社長が「もう車はやるから、機材だけ返せ」ってネットで訴えかけてて。犯人がそれを見たのかは分からないけど、もしかしたらそれを見て返してくれたのかも知れへんけど、楽器って売ったら足付くんで。それがメンド臭くて戻したのかな? とも思うし。Sissyの機材も流すのはメンドくさいと思うよ。
原 警察に届けた後、楽器屋さんやリサイクルショップは連絡取れるところには情報を回して。ネットもチェックしてるので、流れてはいないと思うんですよね。
Shunp 流れたらすぐ分かるから、そこで足が付いて捕まったら面白くなるのにな(笑)。
――やっぱり機材を流すのは難しいんですね。
Shunp 難しいですね。シリアル番号もあるし、ファンが見たらキズ一個で分かったりしますからね。キャビヘッドや竿、マイクとかは特に難しいと思いますよ。
ウチがパクられた時、Yahooニュースかなんかで「楽器含め、被害総額1,000万円」って書かれてて、「そうだっけ?」って驚きましたけど、あの時はツアーとレコーディングを同時にやってたんで、50万円のスネアやコンプレッサーとかのラック機材が乗ってて。かなりの高額やったことは確かなんで、機材が返ってきた報告を受けた時は警察が神様に見えました(笑)。
原 僕らは盗まれた時、パトカーが5台も来たらしくて(笑)。それぞれに事情聴取されたらしいんですけど、みんな同じことを聞くんですって。
Shunp それ、完全に疑われとるやんけ(笑)。
原 そうなんです。で、さすがに3人目くらいでイライラして、「俺の話はいいから、犯人を追ってくれ!」って言ったらしいです(笑)。