――でもそれって、『BANDやろうぜ』が、「雑誌って何ができるんだろう」ってちゃんと場を作っていた雑誌だったことの裏返しだと思います。『ROCK AND READ』もそういう雑誌だと感じるのですが、吉田さんの携わる本って、そこが一貫してるのはすごいなと。
吉田:「雑誌に何ができる」なんてカッコいいことを、普段から深く意識してるわけではないですけどね(笑)。あ、でも象徴的なことがありました。同じヴィジュアル系雑誌だった『Neo genesis』と『Zy.』がちょうど同時期(2011年)に休刊になったんですよ。あの2誌ってヴィジュアル系雑誌らしく、写真が素晴らしい雑誌でした。
一方『ROCK AND READ』は、とにかく文字を読ませる雑誌じゃないですか。ヴィジュアル系ってジャンルを扱ってるのに、写真じゃなくて文字が残ったって、その「雑誌として」みたいなところが関わってくる部分なのかな、とは今ちょっと思いました。
――更に、一般的に雑誌って広告を沢山掲載することで採算をとっている場合が多いですけど、『ROCK AND READ』は全然そういう作りじゃありませんよね。「一定数にしっかりと良いものを届けることで続いていく」ってこれからの雑誌に求められてることなのかなと思います。
吉田:そうですね。『ROCK AND READ』は10万部売ろうと思ってる雑誌じゃないですからね。本当にヴィジュアル系が好きな人に良いものを届けてあげたいって思います。
だから、あんまり別のジャンルの人を載せようとかも考えたことはないな。Twitterで、「吉田さんが良いって言ってるバンドを聴いてみたらすごく良かった」って書いてくれてる人がいて、そういう感想が何より嬉しいです。「ちゃんと1人に届いた!」って思いました。10万人に読まれることより1人を動かすことのほうが嬉しいって思います。
『ROCK AND READ』はテレビじゃなくてラジオなんです。“みなさん”じゃなくて、たったひとりの“あなた”に届いてほしいと思って、僕は雑誌を作っています。
吉田幸司 プロフィール
『ROCK AND READ』編集長。他にも『IDOL AND READ』『club Zy.MAG』『音楽主義』などを手がける。編集プロダクション「アクセル・コミュニケーションズ」代表取締役。