今回の撮影でいちばん“地獄”だったのは?
――今回の撮影でいちばん大変だったことは?
「僕も大助と同じように人にいちいちツッコミを入れるテンションが高い人間なので、素に近い形で楽しく、のびのびと演じることができました。
ただ、地獄のシーンで拷問を受けているのは僕だけなんです(笑)。
吊られたり、落とされたり、凍ったり、転んだり……すべての拷問を受けなくてはいけなかったので、そこは大変でした」
――中でも、いちばん“地獄”だったことは?
「セットが変わらないことです(笑)。
最初はセットを見て“地獄、すごい!”と思っていたのですが、1ヶ月間ずっと“地獄”に通っていると、現実と地獄のどっちにいるんだろう? と思いましたし、本当に地獄にいるような気がしていました (笑)。
なので、外に出たときや、長瀬さんが差し入れを持ってきてくださったときは“天国”でした」
――“地獄”のセットで撮影しているときに“天国”を味わうことはなかったですか?
「ほかの役者の方々が自由にアドリブを入れてくださるのですが、そこは心が動く瞬間でもあるので、楽しかったです」
――これまでの仕事の中で、神木さんが役者として追い詰められた経験はあります?
「セリフを噛んだら追い詰められます。
特にドラマの『学校のカイダン』(15)のときは毎度毎度追い詰められていたし、セリフもすごく噛んでいました。
同じところで噛むかもしれないと思うとまた噛んでしまったり、言えなくなってしまい、どんどん追い詰められていくんです。電車が背後を通った後の長い芝居とか、芝居をするチャンスが一回しかないような状況になると、すごく追い詰められます(笑)」
――そうやって、何度も噛んじゃうようなときは、それをどう打破するんですか?
「ある意味、自分ひとりの勝負になってしまうので、折れかけるのですが、自分で自分に“大丈夫、大丈夫。次は絶対にできる”って言い聞かせて演じています」
――その追い詰められているときは、俳優にとっての“地獄”と捉えてもいいですか?
「そうですね。ある意味、地獄の中でひとりでどう立ち向かって生きていくのか?という感じはあると思います」
“天国”を感じる瞬間は?
――逆に、俳優業をやっていて“天国”を感じる瞬間はいつですか?
「現場の場合は無事に全編の撮影が終わったときや自分が苦手なシーンが上手くできたときですが、最終的には観てくださった人が“よかったよ”と言ってくれることが“天国”です。
どんな仕事でもそうだと思いますが、辛いことや大変なことを乗り越えたときは、“地獄”でもがいてよかったなと思う瞬間です」
「男子は必死です。常に必死!」
――大助は片想いをしているひろ美ちゃん(森川葵)に会うために頑張りますが、神木さんも好きな女の子のために頑張るタイプですか?
「男子は必死です。常に必死!」
――すべての女子にモテたいんですか?
「自分の高校生活を振り返っても、確かに“すごくモテたい”と言っていたし、少女漫画の女の子から憧れられている男子みたいになりたいと思っていました(笑)。
だけど、本当にモテる人って、絶対に“モテたい”と口にしないし、寡黙でオンリーウルフのような人物なんです。そうすればよかったです(笑)。
ある程度、みんなの輪から外れていれば、もしかしたら違う結果になっていたかもしれないです。
ただ、僕が“モテたい”と公言して、モテる努力をずっと見せていたのは、“オマエ、モテたい、モテたいって口にするもんじゃないよ!”ってツッコミを入れられながら、みんなが笑ってくれるのが嬉しかったからなのかと、いまになってすごく思います。
“オマエ、ダサいよ”と笑われている自分が嬉しかったんだと思います。友だちにそういう人がいても、僕はたぶん好きになります。
スカしている人より、自分の気持ちを正直に言って、頑張っている人の方が、最終的にはカッコいいなと思います。
なので大助を演じているときも、観た人が最初はダサいと思っていたのに、最後は少しカッコいいかもしれないと思っていただけたらいいなと思っていました。
自分の中のカッコいい人物は、けっこう大助に近いのかもしれないです」
――本作の中で、神木さんがモテるだろうなと思うキャラクターは誰ですか?
「キラーKはカッコいいし、男らしいですが、モテるのか?と言ったら難しいですね。
キラーKは可愛げがあって、お茶目なところもあるので僕はすごく好きです」
――やっぱり、お茶目なところに惹かれるんですね。
「鬼で背が高くて怖いけれど、すごく人間らしいところがあるんです。
宮藤官九郎さんの作品はどれも人間臭いというか、人間の心の嫌らしいところやズルいところが素直に描かれていますし、そこがすごくいいなと思います。
と同時に、登場人物が単純な理由で真っ直ぐにひとつのところに向かっていて、可愛げがあるし、憎めないところもある。そこがすごく人間らしいなと思うので、今回も台本を読んだときから心がすごく温かくなりました」