実は、3泊以上になるとケンカが増えるんです。2泊までならぎりぎりガマンできるけれど、3泊以上は本当の姿が出て言い合いを始めるのです。
本当の人間同士のぶつかりあいになる分、仲直りの経験も増え、すごく仲良くなるし自分の言いたいことが主張できるようになります。
また、年中や親子で行くなら、日帰りか一泊ぐらいがいいかなと思います。
親元を離れる“やせ我慢”で得られるもの
――野外体験の一番の意義は、やはり親元を離れることですか。
箕浦:そうですね。一番は、親元を離れてやせ我慢をすることです。そこでは、味方がいない中で頑張る、まず味方を作るというところから始まるんですよ。
野外体験の世界は、社会そのものだと思っています。会社に入ると、周りは誰も知らない、でも自分の居場所は自分で作っていかなければならない。その疑似体験が非日常の野外体験には凝縮されているのです。
ちなみに、花まる学習会では「お友達との参加を禁止」にしているので、初めてあった子どもたちでチームをつくり、3泊4日ないしは2泊3日を過ごします。
これはある人から教えてもらったのですが、「子どもひとりを育てるには、村ひとつが必要」という言葉があります。聞くと大げさな気もしますが、現場で見ているとその言葉はあながち嘘ではないと感じています。
田舎に行って子どもたちが探検をしていると、地元の方々が野菜をたくさんくれる。港町では、朝の散歩にいった子どもたちが、みんな大きな魚を抱えて戻ってきました(笑)。子どもが少ない町だから、何かしてあげたいという気持ちなのでしょう。
そういう愛情を受けた子どもたちは人のあたたかさを知り、「思いやりの心」を自然と持つことができるようになるのだと感じています。親以外のたくさんの大人と関われるということも、野外体験の醍醐味のひとつです。
そして、実際に体験してみなければ絶対に感覚として身につかないことは、自然の恐ろしさと雄大さ、美しさです。自然はときに人間に牙をむくことがあります。そのときは、人間の小ささを実感するしかありません。
でも怖さだけがすべてではない。真っ赤に燃えるような夕陽を眺めたり、山に向かって大声で叫んでみたり、夜風の音や小さな虫の鳴き声に耳を澄ませたり…。