古い体質のままでは制作プロダクションは生き残れない

――もう一つ、気になるのが「動画配信事業は儲かるのか」ということです。既存の映像産業と比べるとまだ小さな市場だと思いますが、今後はどうなるでしょうか。

三宅:dTVに関しては会員が約500万人もいるので、当然利益は出ています。

といってもすべて自分たちの利益にしているわけではなく、次への投資やスタッフやキャストに視聴率の貢献度に応じたインセンティブをお支払いしているんです。

グッドシェアシステムと呼んでいるのですが、音楽の印税に近い考え方ですね。

インセンティブが出れば作り手のモチベーションも上がると思いますし、いい循環になればと考えています。

丸山:制作プロダクションは体質が古い業界でして、いいものを完パケするまでが仕事だという意識があるんです。

逆に、制作したコンテンツをどうヒットさせるか、どうお金を稼ぐかというところまでは考えないんですね。

でも配信事業は、そういうプロモーションのところまで含めて、事業者と制作プロダクションが一緒に考える体制を作れるかがヒットのカギだと思います。

――制作プロダクションが運営にも関わっていくようなことも?

丸山:それはわかりませんが、運営やプロモーションの知識を身につけることは必要です。

さすがにまだしばらくは難しいでしょうけど、将来的にはそういった新しい制作体制を作っていけるところが生き残るでしょう。

次のトレンドはVRとグローバル化

――動画配信の次のトレンドをどのように考えていますか?

三宅:チャレンジしていきたいのはVRですね。

dTVでは、8月27日、28日に開催されるフェス「a-nation stadiu fes.powered by dTV」でのアーティストのライブステージをVR配信することが決定しています。

それからネットはどこからでも見られますから、グローバル化も進んでいくでしょう。弊社の社長の言葉ですが、「デジタル化はグローバル化」なんでしょうね。

日本でヒットしたから輸出しましょうというのではなく、最初から海外と手を組んで世界でヒットするコンテンツを制作していく必要があります。

丸山:今は事業者も、制作プロダクションも、そしてユーザーのリテラシーもまだ育ちきっていない状況です。手探りなんですね。

この三者のリテラシーが上がったどこかのタイミングで、配信はものすごく大きな市場になると思いますよ。

やまだい・ゆうき 映画、漫画、ゲームなどエンターテインメント関連の記事を中心に執筆するフリーライター。飲料では特にコーヒーとカフェオレをこよなく愛しており、これまでに数百もの缶コーヒーの感想を記録している。ブログ