産後ケアは、新生児訪問だけでは足りていない
――宗さんはドゥーラ協会のホームページのなかで、「年間100万人生まれる赤ちゃんに対して、地域で活動できる助産師の数は1800人しかいない」と言われていますが、ほとんどいないに等しいですよね。
自治体のしてくれることとして、新生児訪問が思い浮かぶのですが、私自身の経験ではサポートというよりアンケートを受けただけ、という印象でした。
宗:そうなんですよ。現行の新生児訪問って、なんのために行われているのか、ママには伝わり辛いんですよね。新生児訪問についてもその役割があるかと思いますが、赤ちゃんの沐浴をするとか、買い物をしてあげるとか、そういうものでないと、ママが求めている産後ケアとしては不十分。
今、お母さんに必要とされているのは、ご飯を食べる間だけでも赤ちゃんを抱っこしてあげるとか、そういった具体的なことなんです。
ママはもっと周囲の手を借りていい
――産後ドゥーラは、サービスになるので誰もがすぐに躊躇なく使えるわけではありませんが、東京の中野区や杉並区などではすでに産後支援として、産後ドゥーラ利用に補助が出る自治体も増えてきていますね。
宗:はい。それから、企業のなかにも福利厚生として、産後ドゥーラの利用を検討しはじめたところも出てきているようです。
――なるほど、ベビーシッターの利用券などの福利厚生がある企業は、すでにありますね。
最後に思うのですが、いくらサポートやシステムなどがあっても、それを利用する女性側の意識の変革が大事なのではないでしょうか。
まわりの理解も必要ですが、「お母さんになったのだから」と、休むこと自体に罪悪感を抱く人もいると感じます。
宗:本当にそうです。だから、産後に実際に大変だった人たちがこれから産む人に産後ケアの必要性を伝えたり、メディアにも、産後はしっかりと休まないと次のステップになかなかいけないんだということを、もっともっと伝えていってほしいですね。
それと、うちの助産院では、「両親学級」といって、産後ケアの必要性につい話す機会ももうけています。
産後の生活のサポートをどうやってまかなうか、父親になる男性の帰宅時間などもお聞きして、なぜ産後休むことが必要なのかを学びます。
――それは助産院で出産予定の人を対象としているんですか?
宗:いいえ、予定していなくても参加可能ですよ。
――なるほど。地域に広く門戸を開いてらっしゃるのですね。本日は、ありがとうございました。
まとめ
これだけ情報があふれている現代においても、産後ひとりで悩むママの中には、どこに、誰に助けを求めていいのかわからない、という人も多くいます。
自治体がなんらかのサービスを行っているかもしれませんし、産後ケアに特化した助産院のあるところもあります。まずは地元の情報収集から始めてみてはどうでしょうか。
取材協力:宗祥子(松が丘助産院) 一般社団法人ドゥーラ協会
参考:年4万人の妊産婦「精神疾患の治療やケア必要」 厚労省
※2016.8.30 一部表現に誤りがあったため訂正致しました。読者の皆様にお詫び申し上げます。