「子育てが上手にできない」「赤ちゃんがかわいいと思えない」
――宗さんが、2012年に一般社団法人ドゥーラ協会を立ち上げて、産後ドゥーラという産後ケア専門の担い手の養成を始めたきっかけをお聞かせください。
宗:もともとは、うちの助産院でお産をした人で、この人、産後に家に帰ったらお世話をしてくれる人はいるのかしら、と、こちらが心配になるような人が多かったことが、きっかけでした。
上の子もいるし、夫の帰宅は遅い、自分の親は高齢化しているか、もしくはまだ現役で働いているので頼れない。
そういうことを感じて、これは誰かちゃんと世話をする人がいないといけないな、と思ったのが最初の想いです。
その後、産後ケア外来を始めて、ここ数年、急激に子育てがうまくできない人が増えていると感じるようになりました。赤ちゃんをかわいいと思えない、抱っこしたくない、という人が、実際に何人もいるんです。
――その原因には何があるとお考えですか?
宗:やはり、産む人たちの実母世代の人たちが、母親になる人たちを支えきれないということがあると思います。
実母世代はすでに医療介入したお産、つまり病院での出産が主流になった時代に出産しています。
赤ちゃんとのコミュニケーションの第一歩になる母乳育児を、「おっぱいだけじゃダメ」と信じて軽んじる人もいますし、残念ながら、彼女たちが出産や子育てに関して、適切なアドバイスをできるとは限らないんです。
そのことは、実際に患者さんたちのケースを見ていて、感じたことです。
――たしかにそうですね。お恥ずかしいのですが、私の母はアメリカで私を出産したのですが、床上げの期間が3週間であることを知りませんでした。私が産後、寝てばかりいたら、そろそろ起きなさいと言われました。家族や友人に頼れる人はいいですが、実母を頼れないとなると、自分さえがんばれば、と無理してしまう人も少なくないかもしれませんね。
宗:産んだばかりの女性には特にケアが必要です。
産後ドゥーラを目指す方には、とにかく産婦さんの話を聞いてあげて、受け止めて、休ませてあげてほしいと、常々お伝えしています。
産後ケアは、赤ちゃんをかわいがることができるようになるためのケアなのです。母になる女性には、寄り添う人間が必要なのです。
また、スムーズにお母さんになるためには、出産直後から赤ちゃんと一緒にいることが大事です。
たとえば、泣いたらすぐにおっぱいを飲ませればいいんです、3時間授乳とかにこだわっていないで。そうすることで、オキシトシンというホルモンが出て、赤ちゃんへの愛情がわいてきます。
ところが、母子共に健康なのに夜は分離されたりすると、いざおっぱいを飲ませようという段で、赤ちゃんが飲んでくれないという事態になったりします。
オキシトシンは授乳することで分泌されるホルモンですから、そうなるとオキシトシンが出ない、愛情がわきづらくなる、という悪循環になります。
そういったことも含めて、産後に起こりうる困難を知らない人が多いですね。
――それを教える人がいないということなんですね。